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第43話 足跡を辿れ(14)
***
レヴィたちが斑柄たちのもとに到着する三時間ほど前。ノアが旅立って二時間経っていた。
斑柄と茶トラが静かに昼食をとっていた時、ドアが思い切り勢いよく開かれた。
「マフ様!!」
ドアの前に立っていたのは、黒豹の獣人のホードン・マフだった。
ホードン・マフは、ハザール家の当主、ナディル・ハザール(キア・ハザールの父)の腹心の部下の一人だ。
「緊急の連絡だったようだが」
横柄な声はいつものこと。斑柄は、ノアが枯れ木に接触したことと、その彼がアシュレーを名乗ったことを伝えた。
「何、ノア・アシュレーと名乗ったのか」
冷静で表情をめったに表さないホードン・マフが珍しく驚きの声をあげた。そのことに、二人は驚いた。
「は、はい。あの子は二時間ほど前にここを出て行きました」
「くっ。そうか。お前からの連絡をもらって、すぐに来ればよかったな……」
悔しそうな顔をするのを見て、再び驚く。おどおどしながら斑柄が言う。
「あの……一応、あの子に私の革ジャケットを着させました。ですから、匂いで後を追いかけることができるはずです」
「そうかっ!」
それを聞いて、そのまま飛び出そうとするホードン・マフ。
「あ、あのっ」
そんな彼に茶トラが声をかけた。
「なんだ」
苛立たし気に言われ、ビクリとする茶トラ。それでも、ノアに対して情がわいてしまっているせいか、言葉を続けてしまう。
「あ、あの子が、あの方が求めていた者なのですか?」
「……それは、お前たちは知らなくてもいい」
そう言葉を残すと、ドアを開け放ったまま、すぐさま家を飛び出して行った。
「あんた……あの子は、大丈夫かねぇ……」
茶トラはホードンが去っていたほうを、心配そうに見つめ続けた。
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