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第45話 足跡を辿れ(16)

 ポップンは相変わらず後ろを気にしているようだけど、僕は一旦、泊まるところを確保しなくちゃいけないと思った。  しばらく歩いた僕たちは、宿の看板がかかっていた古臭い建物の前に立った。チカチカと明滅している電灯に、ちゃんと宿としてやってるのか心配になりながらも、古い木製のドアを開ける。 「すみませ……ん?」  受付のようなところには、誰もいなかったけれど、薄暗い電灯はついていた。僕はポップンを中に入れながら、カウンターのところにあったベルを鳴らした。ベルの音が鳴った後、奥の方からパタパタと歩いてきたのは……柴犬のような頭の獣人だった。 「はいはい……おや、人間のお客さんですか。いらっしゃいませ」 「あ、あの一晩お願いしたいたのですが」  僕とポップンを見比べながら、柴犬のおじさんは一瞬困ったような顔をした。 「んー、僕、親御さんは一緒?」 「え、いえ、僕とこの子だけなんですが」 「……まさか、家出とかじゃないよね?」  僕が制服を着ているせいなのか、それとも、僕はそんなの子供っぽいのだろうか。 「家出じゃないです。今は一人旅というか……」  こういう時の言い訳みたいなのを準備しておかなきゃいけないのか、と、柴犬と話をしながら思った。  そして、不意に思い出した。もしかしたら、おじいちゃんたちは、こういうところに泊まったりしなかったかなって。 「あ、あの、前に老人の夫婦がここに泊まったことはありませんか?」  柴犬は、ん?、という顔をした。 「人間のというのなら、ここ最近はこんなところに来る客はいないねぇ……最後に泊まった人間の客は、確かに老夫婦だったけど、それも、もう二年近く前のことだよ?」 「も、もしかして、この人たちですか?」  僕は慌てて、僕の小さなお財布を探し出すと、そこに入れておいたおじいちゃんたちとの写真を見せた。 「ん~、人間の顔はみんな同じに見えるからなぁ……」  そう言いながら、胸元のポケットに入っていた眼鏡を取り出して目にかけると、写真を見てくれた。 「……わからんけど、似てる……かなぁ……この人たちは?」 「あ、僕の祖父母なんです。僕、行方不明になった祖父母を探してまして。」  僕の言葉を聞くと、不憫そうな眼差しで僕を見下ろすと、少し考え込んでから、カウンターの中からノートを出して来た。 「そうか……とりあえず、ここにお前さんの名前を書いてくれ。後でよければ二年前の台帳を見てみよう」  僕はノートに名前を書きだした。 「ん……ノア・アシュレーさんね。アシュレー、アシュレー……なんか聞き覚えがあるなぁ……」 「あ、あの、この子も一緒に同じ部屋にいてもいいですか?」  僕はポップンの首を抱きしめながら、柴犬のおじさんにお願いをした。眼鏡をずらして、ポップンを見つめると、ニッコリ笑って答えた。 「ああ、いいよ。食事はどうするね」  こうして、僕たちは、ようやっと落ち着いて食事と寝る場所を確保することができた。