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第48話 足跡を辿れ(19)
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窓ガラスの割れる音と共に、ポップンの激しく吠える声で、思わず僕は飛び起きた。
ベッドの上掛けに飛び散るガラスの小さな破片。そして、外から入り込んで切る冷気と、部屋にもう一人誰かが入り込んでいることに気づき振り向くと、暗がりの中、そこには大きな狼の顔をした男が青く瞳を輝かせて立っていた。
「ひっ!?」
僕は思わず上掛けをかぶってベッドに潜り込み、そいつから姿を隠そうとした。
「ノア、大丈夫か?」
その声は、聞き覚えのある声だった。
「え?」
ベッドから目だけをそっと出して見るそれは、やっぱり狼なんだけど、とても綺麗な白銀の狼だった。
「……綺麗……」
思わず小さく呟き、上掛けをゆっくりと下ろしてく。ポーッと見惚れていると、白銀の狼は僕の目の前にしゃがみこんで、大きな手で僕の頭に触れた。さっきまで窓のほうで吠えていたはずのポップンは、その白銀の狼の隣に大人しく座って、尻尾を振っている。なぜだか、白銀の狼の蒼い瞳に、懐かしさを覚える。
「だ、大丈夫ですかっ!?な、何が……っ!?」
柴犬のおじさんが、慌てたように部屋に駆け込んできた。
「あ、あんた、誰ですかっ!?ノアくん、大丈夫かいっ!?」
両手に、フライパンと、 大きな麺棒を持って立っている柴犬のおじさんが、威嚇するような声で唸っている。
「驚かせてすまなかった。ノアが襲われそうになったもんでな」
立ち上がった白銀の狼はとても大柄で、柴犬のおじさんを完全に見下ろしていた。
それにしても、僕の名前を知っていて驚いた。この人は、僕のことを知ってるの?
「あ、あの……あなたは、誰ですか?」
僕がベッドの中から、おどおどしながら聞くと、白銀の狼は耳をピクリと動かして僕の方を驚いたような顔で振り向いた。
「おい、俺がわからないのか?」
そう言われても、僕には獣人の知り合いは、あの斑柄のネコのご夫婦と、ここの柴犬のご夫婦くらいだもの。こんな大きな狼さんは、知らない。
「レヴィ、わかるわけないだろ、ノアの記憶にあるのは人型の俺たちの姿なんだから」
そう言って、柴犬のおじさんの後ろから、今度はまっ黒な大きな狼が現れた。
「え、レヴィ?」
名前を聞いて驚いた。レヴィの獣人の姿が、この白銀の狼?
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