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第49話 足跡を辿れ(20)

 壊された窓は、すぐに栗色の狼の魔法によって修復された。目の前で直っていく様を、柴犬のおじさんはびっくりした顔で見つめていた。 「こんな村には、魔法を使うようなのはいやしないからねぇ」  そう言いながら、僕たちを食堂に案内してくれた。  そして今、僕たちは、柴犬のおじさんが用意してくれたコーヒーを飲みながら、食堂のテーブルについている。けして狭い部屋ではないはずなのに、この狼たち三人と縛られて転がされている黒豹がいるせいで、すごく狭く感じる。  僕は、三人の狼をチロチロ見ながら、コーヒーカップに口をつけた。ポップンは、黒豹の目の前に座って、黒豹をジーッと見つめている。 「落ち着いたか?」  声はレヴィの白銀の狼が、僕に優しく声をかけてきた。 「う、うん」  蒼い瞳を見れば、レヴィってわかるけど、やっぱり狼の姿には慣れない。そして、漆黒の狼が、エミールだなんて、驚いた。もう一人の栗色の狼が、誰なのかわからなくて、小首をかしげると、優しく微笑みながら、その人は自己紹介をしてきた。 「こんばんわ。ノア・アシュレーくん。私は、エリィ・アイサール。君と同じナイラム魔法学校の卒業生だ。そして、この二人のお目付け役みたいなものかな」  そう言いながら、この人は目が潤んでいるように見える。 「そして、君の子守でもあったんだよ」  エリィは、そういうと僕をギュッと抱きしめてきた。 「え、え、え?」  僕は今の状況に、ついていけていない。頭の上には、たくさんのクエスチョン・マークが浮かんでる。 「本当に……本当に、君が生きててよかった」  そう言って、よりきつく抱きしめてくる。ちょっときつくて、僕は息苦しくなってきてしまって、エリィの背中をポンポンと叩いてしまった。 「おい、エリィ、ノアが苦しがってるっての。いい加減、離れろっ」  そう言うと、レヴィがエリィの首をつかむと、軽々と僕から引きはがした。 「な、なんだよー。せっかくの再会なのにー」 「再会って言ったって、肝心のノアが全然覚えてないみたいじゃねーか」  荒々しい言い方が、姿は狼でもレヴィの話し方だと気づくと、僕は本当にこの白銀の狼がレヴィなんだ、と実感する。 「え、あの、エリィさんは、僕を知ってるんですか?」 「ああ……本当なんだね……レヴィ達が言ってた記憶がないというのは……」 「えっ!?」  僕はレヴィとエミールを見つめた。二人ともが、寂しそうに僕を見ている。 「ど、どういうこと……ですか?」  三人は顔を見合わせたかと思うと、エリィさんが静かに話だした。 「私たちは子供の頃、一緒に暮らしてた時期があるんだよ」  その言葉は、まさに青天の霹靂だった。

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