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第50話 知らされた過去(1)

 静かな食堂で、僕は、次に何を告げられるのか、不安に思いながら、三人の姿を順々に眺めた。  三人が三人とも、とても優しい眼差しで僕を見つめてる。僕はテーブルの下で、手を強く握りしめた。その手の甲に、ポップンが優しく鼻づらを押し付ける。見下ろしたところで、ポップンと目が合った。僕は握り締めていた手を開き、ポップンの頭を撫でた。 「エリィさんのお話だと、僕は、レヴィとエミールとは従弟という関係にあるということですよね」  ポップンを見つめながら、小さな声で確認した。 「そうだよ。レヴィとエミールは従兄弟同士なのは知っているよね。そして、君のお父さんは、この二人の父親たちの異母弟だったんだ」  そう言われても、二人は完全な獣人なのに、僕は完全に人間。どう見ても、血縁関係にあるようには思えないんだけど。  レヴィとエミールを、見比べる。毛の色が違うだけで同じ顔にしか見えない。もちろんエリィさんも。 「半獣人の存在は知っているよね?」 「……はい」  エリィさんは、不審そうな顔をしている僕を苦笑いしながら話を進めた。 「君のお母さん、フローラ・アシュレーと、君のお父さん、リーナス・ハウ、本当の名前はリーナス・シュライデン。この二人は人間と獣人だった。その間に生まれた子供は、必ず半獣人が生まれる。今は人間の形をしているけど、君は正真正銘、半獣人だ」 「は、半獣人って、耳とか尻尾とかついてるものじゃないんですか?」  僕が学んだ知識では、確か、半獣人には耳と尻尾がついてて、 獣人同様に、人型を維持することもできた。そして、獣人同様に、発情期があったはずだ。 「ぼ、僕には、そんな耳や尻尾もついてないし、その人型を維持するとかも、よくわかんないし、は、発情期だってないですっ」  顔を真っ赤にしながら、僕はテーブルとにらめっこしてた。だって、は、『発情期』だなんて……は、恥ずかしいもん。 「それなんだが」  レヴィが、まるで何かを探るように、ジッと僕を見つめる。 「お前にはフローラの魔法がかけられてる。たぶん、半獣人の姿を隠すための魔法だと思う。初めて見た時はわからなかったけれど、お前と話をするようになって気が付いた」 「ぼ、僕に魔法が?」  思わず、自分の身体をしげしげと見てしまう。だけど、僕程度のものには、そんなものは見えないらしい。 「ある程度魔力の高い者であれば、お前に何かしらの魔法がかかってるのは見えてるさ」 「あ、ある程度って?」  誰からも何も言われたことなかった。それって、見えてる人がいなかったってことじゃないの? 「そうだな~、魔法学校の先生たちには、うっすらとわかるくらいかな」 「で、でも、レヴィたちは?」  先生たちにわかんないのに、なんで。 「俺たち?俺たちは、これでも、魔法学校では学年一位と二位だよ」  確かに、この人たちは先生方が一目おく二人。僕が魔法の杖でもできないような魔法を、この二人は杖なしでもできてしまう。 「それに、俺たちはいつもお前のそばにいただろ」 「?」 「フローラの魔法の感覚を覚えてるから、わかるんだよ」  そういうものなんだろうか? 「たぶん、先生方は、ノアのおじいさま、ナレザール・アシュレーが保護の魔法をかけてたのだろうと、思ってたんじゃないかな」  漆黒の狼のエミールが、優しい声で言った。

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