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第51話 知らされた過去(2)
そう考えると、この二人の魔力ってどれだけすごいというのだろうか。
――そもそも、魔法学校に来る必要なんか、あったんだろうか
そんなことを考えながら、二人を見ていたが、ふと、思い出してしまった。
「だけど、僕には二人みたいな魔力が……」
「それは、フローラの魔法で抑え込められてるんでしょう」
抑え込められてる……?
「な、なぜでしょう?」
不思議に思ってエリィさんに聞いてしまう。
「たぶん、半獣人であるのを隠すためにかけた魔法が、魔力も抑え込んでるのかもしれません」
「……?」
「ノアは、自分の子供の頃のこと、どれくらい覚えてる?」
僕の子供の頃……。
正直、僕の子供の頃の記憶というのは、養護施設にいた時からしかない。それも、あまり愉快な話でもない。
「たぶん、三、四歳くらいで……養護施設にいた頃くらいです……」
「そうか。」
そう言うと、レヴィは自分の携帯電話を取り出して、僕に画面を見せた。
「本当は、もう少し早くに見せてやりたかったんだけど……俺たちのことを思いだしたらと思ってたんだ」
少し寂しそうにに言いながら見せてくれた画像は、どこか立派なお屋敷のようなところで行われているパーティーのようだった。
「ほら、これがお前」
そこに写しだされていたのは、まるで天使みたいにクリンとした白金の巻き毛の半獣人の子供が写ってた。小さな尖った耳と、小さな尻尾も写ってる。
「え、でも、髪の色が違う……」
本当にこれが僕だというの?
「それも魔法のせいじゃないか。ほら、目の色は同じだろ?」
確かに同じように金色の瞳をしているけれど、この子のほうが少し明るい気がするんだけど。
「でも……」
「ノアッ!俺たちが言ってるんだから、信用しろよっ」
白銀の狼の姿のレヴィが強くモノを言うと、ちょっと怖い。思わず、身体を縮こめてしまう。
「おい、レヴィ、ノアが怖がるだろ」
エミールがレヴィの脇腹をつついた。そう言われたことで、僕が怖がってるのに気が付いたのか、レヴィがしょぼんとしたように耳が垂れていく。
「とにかく、これがノアで、その後ろに写ってる三人が俺たちだよ」
エミールに言われて後ろの三人を見ると、狼というよりも子犬のような顔の三人が写ってる。そしてその後ろに とても小柄で子供のレヴィたちよりも少し大きいくらいのショートカットの似合う女性と、レヴィそっくりの大柄な白金の狼。
「この二人……」
「ああ、これがお前の両親だよ。おじいさんたちは、フローラの写真とかは見せてくれなかったのか?」
僕は、小さく頷いた。
そう言われてみれば、おじいちゃんたちからは見せられたことがなかった。だから……本当に僕はおじいちゃんたちの孫なのかなって、不安に思ってたんだ。ようやく見つけた、と言ってくれたけれど、本当なのかなって。
そして、じっくりと二人の姿を見つめた。とても優しそうな顔で微笑んでいる母は、綺麗なプラチナブロンドの綺麗な髪をしていた。その母の肩に手を回している白金の狼は、とても強そうで、頼もしい感じの獣人だった。僕は、全然実感は湧いていないというのに、なぜだか涙が零れてきた。
「お、おい、ノア、大丈夫か?」
レヴィが慌てて椅子から立ち上がると、僕のそばにしゃがみこんだ。
「う、うん……なんだか、自然と涙が零れて……」
僕の頭を、レヴィの大きな手が優しく撫でてくれる。隣で見つめるレヴィの瞳が、いつも以上に優しく見える。
「えへ……ごめんなさい。こんな泣き虫で……」
僕は手の甲でごしごしと涙を拭った。
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