52 / 160
第52話 知らされた過去(3)
チラリとエリィさんが壁の時計に目をやった。
「もう、だいぶ遅いです。今はここまでにして、また明日……というか、もう今日ですが、朝になってから話をしましょう」
床に転がされた黒豹は、エリィさんに魔法をかけられたまま食堂にそのまま放置され、僕たちは柴犬のおじさんが用意してくれた部屋で休むことになった。
「……俺、ノアと一緒がいい」
わざわざそれぞれの部屋を用意してくれたというのに、部屋に分かれる時になって、僕の隣でレヴィがポツリと言い出した。
「お前、何いってんだ。子供か」
呆れたようにエミールが言う。僕も、どんな顔でそんなこと言ってるんだ、と、思わず見上げる。
「……もう嫌なんだ。」
切なそうな瞳で僕を見下ろしてきて、ドキリとする。あの蒼い瞳が潤んでいるようにすら、見える。
「ノアが気がついたら、いなくなるのは」
急に、ギュッと抱きしめてきた。
「レヴィ?」
いきなりだったのに驚きながらも、レヴィの毛並がひどく気持ちいい、なんて思ってしまう。そして、とっても温かいなと。
「ったく。我儘なヤツだな」
エミールが苦笑いして、エリィさんもお手上げ、みたいに手を上げてる。
「ノア、悪いけど、こいつをよろしく頼むよ」
「え、あ、は、はい……え、えぇぇ?」
僕が返事をしたと同時に、レヴィがニヤリとした。
「じゃ、遠慮なく」
「えっ!?えっ!?」
僕の身体を軽々と肩に担ぐと、僕の部屋のほうに歩いていく。なんだよ、さっきのあの泣きそうな顔してたのはっ!?
「ちょ、ちょっとレヴィ!?」
「文句言うな」
嬉しそうに部屋のドアを開けると、後からついてきたポップンも入れてやり、ドアを静かに閉めた。
ともだちにシェアしよう!