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第53話 知らされた過去(4)
ポップンは嬉しそうに俺たちの後をついてくると、ベッドの脇に座り込んで俺たちを見上げている。さっきの黒豹には唸ったのに、レヴィたちには全然、そんな反応をしないから、不思議だ。レヴィは僕を優しくベッドにおろした。
「こいつは偉いな、ちゃんとノアを護ってくれて」
そう言うとポップンの頭を優しく撫でると、ポップンは嬉しそうに、尻尾を振りながら、レヴィをじっと見つめた。
「でも、これからは俺が護るから、お前はゆっくり休め。」
レヴィの言葉が通じたのか、ポップンはドアのそばまでいって眠る体勢に入った。
「うわぁ……獣人と動物って言葉が通じるの?」
思わず言葉が出てしまった。
「そんなわけないだろ。でも、こいつは魔法犬だから、理解するように作られてるのかもしれない。それより……」
レヴィはおもむろにドアに向かうと、何かブツブツと呟いた。すると一瞬ドアが青白く輝いたように見えたが、特にそれ以上は変わったことはなかった。
「……何をしたの?」
不思議に思って背を向けているレヴィに問うと、ゆっくり振り向いた。
「別に。ドアに鍵をかけただけだよ」
「鍵?でも、今のは魔法だよね?」
「ああ。さっきみたいに勝手に開けて入られないようにね」
そう言ってウィンクするレヴィ。
「さぁ、ノア、ベッドに入って休むんだ。朝、起きたらゆっくりと話そう」
そう言うと僕をベッドの奥のほうへと押しやる。その上、狭いベッドなのにあんな大きな身体をしてるのに強引に入ってきた。
「ちょ、ちょっとレヴィ?!」
「何」
「な、何って、せ、狭いでしょ?」
僕はどんどん壁際に追いやられてしまう。
「だったら、こっちに来い」
「えっ!?」
レヴィの腕が僕の身体に回り込んで、完全に抱きかかえられてしまった。あ、あったかいし……なんか、いい匂いがする。
「ノアは、小さいなぁ……」
なんだか楽し気に言うレヴィに、少しばかり、カチンとくる。
「し、失礼ですねっ。ぼ、僕にだって男としてのプライドがあるんですよ」
抱えられながら言う言葉ではないけれど、なんとか下から見上げる。大きな顎に隠れてしまって、レヴィの表情がわからない。だけど、胸に寄り添うとトクン、トクンと微かな心臓の音が聞こえてくる。その音は、なぜかとても僕を安心させてくれて、いつの間にか、すっかり眠りに落ちていた。
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