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第56話 知らされた過去(7)

* * *  この匂いはなんだろう。  とても懐かしいような、まるで、日だまりのなかのような、安心させるような匂い。そして、なんともいい手触りの……毛皮?無意識に手で撫でまわし、思わず頬擦りしていると、 「ん…ノ、ノア……?」  少し掠れたような声が頭の上から降ってきた。聞き覚えのある声で名前を呼ばれて、うっすらと目を開くと、とても綺麗な毛皮が目の前にあった。銀糸のように輝く毛皮、それが小さく上下に動いてる?……これって、呼吸してる?!ゆっくりと離れようとすると、急に思いきり抱き寄せられた。 「そんなに気持ちいいか?」  クスクスと笑いながら僕を抱き締めていたのは、いつのまにか上着を脱ぎ捨てていたレヴィだった。 「レ、レヴィっ!?」  見上げると目の前にあったのは、狼の大きな顎。ちょっとばかり身体を離してレヴィの顔を眺める。狼の口はとても大きくて、僕の頭なんか一飲みしてしまいそうで、それだけで怖いと思いそうなのに、なぜか、そんなに怖く感じなかった。むしろ、大きくて鼻筋の通った鼻に見惚れて、無意識に撫でてすらいた。 「どうした?」  優しい声で僕を見つめる瞳は、とても蒼くて澄みきっている。 「なんだか不思議で」  撫でる手を止めずにいると、レヴィが目を細めて喜んでいるのがわかる。獣人は表情がわかりにくい、なんて思ってたけど、そんなことはないみたいだ。思わず、ポップン同様にレヴィの鼻の上に口づけすると、レヴィが驚いたように声をあげた。 「ノアっ!?」 「あっ!!」  よく考えれば、相手はレヴィなのに。ポップンみたいに犬じゃなくて、獣人なのにっ!

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