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第58話 知らされた過去(9)
「ノア、レヴィ、もう起きてるだろ?」
ドア越しにエミールの声が聞こえてきた。
「は、はいっ!」
僕が大きな声で返事をすると、「チッ!」と、小さく舌打ちをするレヴィ。
「ぼ、僕、お腹すきましたっ!さ、起きましょう!」
レヴィの手からすりぬけてベッドからおりた。
その時、自分自身が軽く立ち上がってることを自覚してしまう。こんな風になったこと、今までになかった。だけど、それをレヴィに知られたくなかった。なぜだか、無性に恥ずかしかったのだ。
僕のソレはレヴィみたいに大きくも太くもない。だけどもっと成長したら、僕の身体も、レヴィみたいになるんだろうか。まだベッドの中で、あくびをしながら背伸びをしている大きな身体のレヴィをチラリと見る。相変わらず、彼のモノは落ち着いてはくれなくて、なんだか僕は居たたまれなくなった。そして、ベッドから離れ、僕は急いで制服に着替えた。
のんびりしているレヴィを置いて、僕はさっさと階下に向かった。食堂に着いて驚いたのは、あの黒豹の獣人の姿がないことだった。確かに、昨夜、エリィさんが魔法で捕まえて床に転がっていたはずなのに。
食堂にいた柴犬のおじさんや、昨夜は会わなかった柴犬の奥さんに挨拶をすると、すでにテーブルについていたエミールとエリィさんの姿を見つけた。僕は不安を感じながら、エリィさんの隣の席に静かに腰をおろした。
「おはようございます」
「おはようございます、ノア」
栗色の狼は、優しく微笑みながら上品に紅茶を飲んでいる。
「無事だったか?」
蒼い瞳を面白そうにキラキラさせなが、エミールが僕を見つめている。皿に山盛りになっているベーコンをフォークにさすと、エミールは大きな口の中にそれを放り込んだ。
「ぶ、無事ってなんですか」
「フフフ」
ただ笑うだけで、返事をしてくれないエミールに、僕は少しばかりイラッとしてしまう。
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