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第63話 襲撃者(2)
「その養護施設はどこだ。俺が、そんなところ潰してやる」
あまりにも怒りのこもったような声で言うものだから、僕は慌ててレヴィの顔を見つめた。
「い、いきなり、何言ってるんですか。もう十年近く前のことですよ。それに、今は、レヴィとエミールのお陰で、誰にもいじめられてません」
「でも、今でも思い出すのが辛いのだろう?お前の顔がそう言っている」
僕は、どんな顔をしてしまったのだろう。
感情が表に出てしまったことを情けなく思いながら、レヴィの腕の中から逃れて、僕もコーヒーをもらいにキッチンのほうに向かおうとした。その時、エミールがボソッと呟いた。
「今は、養護施設の奴らじゃなくて、魔法省の奴らにいじめられてるようなもんだな」
ドキッとした。
なんで、魔法省の話が出てきているのかと、そして、今頃になって気が付いた。そもそも、なんで、皆がここにいるのかと。立ち止まって、振り向いた。
「そういえば、なんで、皆さんはここにいるんですか?」
その言葉に、三人が三人とも、目を大きく見開いて僕を見つめた。
……あれ?僕、なんか変なコト聞いたかな?
「レヴィ、昨夜、ノアに話をしなかったのですか?」
「昨夜は遅かったから、朝話そうと思ってた。ていうか、俺が来る前に、エリィが話してくれたかと思った」
エリィさんが、呆れたような顔で言うと、レヴィはムスッとしながらコーヒーカップを口にした。
「まったく……ちゃんと説明しなくちゃ、ダメでしょう」
「わかってる」
そう言うと、レヴィが僕のほうを見る。なんだか、少し深刻そうな顔をしているような気がするのは、僕の考えすぎだろうか。
「ノア、早く、コーヒー貰って来い」
レヴィに声をかけられて、慌ててキッチンに向かう。なんとなく不安を感じながら、急いでコーヒーをもらうと、すぐにレヴィの隣に戻った。
「コーヒー飲め」
「え、それより、話は?」
「いいから」
レヴィはなかなか話を切り出そうとしない。
「レヴィ、時間がもったいない」
エミールが、苦笑いしながら指摘すると、レヴィはイラッとした顔をした。
「わかってる」
コーヒーを一口飲むと、僕はテーブルにカップを置いた。
「話してください」
隣の白銀の狼は、緊張した顔で僕を見下ろした。
「お前が、大魔法使いナレザールとを探すように魔法省から指示された、と校長から聞いた。それも一人で行かされた、と。やっと見つけたのに、また、お前を見失うわけにはいかない」
その言葉に、エリィとエミールが小さく頷く。そして、次の言葉を口にしようとした時、レヴィの蒼い瞳が、不安そうに揺れた。
「……お前は、俺の許嫁だから。お前がいなくなるなんて、俺にはもう耐えられない」
僕には、その言葉の意味が、よくわからなかった。
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