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第64話 襲撃者(3)
最初のレヴィの言葉では、 こんな非力な僕が一人でなんて無理と思われたのだろうか、と思った。それに、探しながらも逆に迷子になってしまうんじゃないかって、思われたのかなと。従弟の僕をようやく見つけたのに、再び見失うわけにはいかない。だから、追いかけてきてくれたのか、と単純に考えかけた。
だけど、レヴィの最後の言葉び意味がわからなかった。
『許嫁』?
僕は、はてなマークを頭の上にいくつも浮かべているに違いない。
「えと、誰が、誰の許嫁?」
ジッとレヴィを見る。
「俺が、お前の許嫁」
「僕、女の子じゃないですよ?レヴィも女の子じゃ……なかったよね?」
僕は真剣にレヴィに言ったのに、ニヤリと笑うレヴィ。
「俺が男なのは、わかってるだろ」
その顔を見て、今朝のことを思い出して赤面する僕。
「それに、お前が女の子じゃないのは知ってる。トイレでちゃんとついてるのを見たことあるし」
「なっ!?い、いつ、覗いたんですかっ」
「そんなことはどうでもいいって」
レヴィの大きな掌が、僕の頭の上をポンポンと軽くたたいた。
「ノアは知らないのか?半獣人は男でも子供が産めるんだよ」
僕の瞳を見つめるレヴィの蒼い瞳が、キラキラと輝いている。
『半獣人は男性でも子供が産める』
その言葉が、僕の頭の中にしみこむまで、少しばかり時間がかかった。
「えっと。」
「だから、半獣人のノアも子供が産める」
「っ!?」
レヴィに言われて、ようやく理解した。だけど、正直、自分が半獣人だっていう自覚はないわけで、『産める』と言われたって、信じられない。
「あの日、婚約式はできなかったけれど、俺の許嫁はお前だけだ」
そう言うと、呆然としていた僕を抱きしめようとした。
「い、いや、ちょ、ちょっと待ってくださいっ」
レヴィに捕まる前に、僕は慌てて席から立ち上がった。
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