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第66話 襲撃者(5)
レヴィの言う意味がわからず、いつの間にか、僕は眉間にシワをよせていたらしい。エリィさんが、シワを伸ばそうと太い指先でグリグリと押して来た。
「あ、す、すみません」
慌てて自分で眉間を隠す。
「まぁ、でも、レヴィの言葉は間違いではないよ」
可笑しそうに笑いながら僕を見つめるエリィさん。
「ノアの誕生日に、レヴィとノアの婚約式をやるはずだったんだ。その前のレヴィの誕生日に、レヴィがノアにプロポーズしてね」
「クスクス……あれは見ものだったなぁ……」
エミールはニヤニヤしながらレヴィを見るから、レヴィは少し焦っているように見える。
「お、お前らっ、笑うことないだろっ」
三人がとても楽しそうに話している姿を見て、僕が知らない過去を共有しているのが、とても羨ましく感じた。
「まだ五歳になったばかりだっていうのに、レヴィは大真面目でさ。ノアの父親のリーナスに言ったのさ。『ノアちゃんを僕にちょうだい』って。あの時のリーナスのポカーンとした顔も、面白かったな。なぁ、エミール」
「すぐに正気に戻ったけれど、五歳のレヴィに向かって、思い切りダメだっ!って言ってた。今思えば、大人げないって俺でも思うけど、あの当時は大柄なリーナスが本気で怒っている姿にしか見えなくて、俺は母親の後ろから覗いてたんだよ」
「それでレヴィが泣きそうになった時に」
エリィさんの言葉が途切れた後、三人の視線が僕を見つめた。
「ノアが言ったんだ。『レヴィちゃんといっしょ~』って。レヴィの腰に抱き付きながら。可愛かったなぁ……」
エミールのその言葉に、レヴィがチラリと視線を向けた。エミールはそれに気づかないフリをしてるようだった。
「私にしてみれば、レヴィもエミールも可愛かったよ、あの頃は。結局、あのノアの言葉がダメ押しで、リーナスも諦めたんだ。レヴィの両親からも懇願されてたし、フローラまでもが、レヴィの味方になってたしね。」
遠くを見つめる皆の瞳には、その時の情景が浮かんでいたんだろう。僕の中には残っていない、その情景が。
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