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第67話 襲撃者(6)
僕たちは食事を終えると、荷物を整えて宿を後にした。宿の前まで柴犬のご夫婦は見送りに来てくれて、「お昼にお食べ」と、人数分のサンドイッチまで用意してくれていた。僕は思い切り頭を下げると、先を歩いていくレヴィたちを追いかけた。
レヴィたちが向かおうとしてたのは、この村の外れにあるバス停。そこからは獣人の国の中心部へ向けて走る電車のある街へ行くバスが来ているらしい。そのバス停には、すでに一台の大きなバスが停まっていた。
僕はすぐにでもポップンを呼び出して、おじいさん達の痕跡を追ってもらおうと思っていた。しかしレヴィたちは、これからのことを考えたら、ちゃんと準備をすべきだ、と、一度大きな街で買い出しをすると言い出した。
それも、どうも、この町から最寄りの大きな街までだと、バスで一時間くらい行ってから電車に乗らないといけないらしい。
「ねぇ、そんな時間、もったいないですよ?」
だいたい、あの魔法省のフルブライトさんが、それなりに僕に渡してくれた荷物があるわけで、今以上に何が必要だというのだろう?
「お前、ずっと、その制服のまま動き回る気?」
そんな格好で?情けなくて仕方がない、というような顔で、レヴィに見下ろされて、改めて自分の格好を見る。確かに、着替えらしい着替えなどなく、学校を出てから三日目の今日も同じ格好をしているのは認める。少し埃っぽいのは、あの道のりを歩いてたわけで、それだって仕方がない。
「今回の旅、というよりも、冒険みたいなもんに、この格好は向いていないだろ」
「だったら、その辺の店でも……」
「それは、俺が嫌なんだ」
レヴィが眉間にシワを寄せる。
……確かに、こんな小さな村に、レヴィたちのような立派な体格の獣人が着るようなサイズの服があるようには見えない。
「そもそも、ここに売ってるようなののセンスが、俺に似合うわけがない」
フンッ、と鼻を鳴らして、周囲を睥睨するように見渡すレヴィ。両サイドに立つエミールもエリィさんも、クスクスと笑ってる。
「農夫のような格好のレヴィも見てみたいけどな」
「意外に似合うかもよ?」
「似合ってたまるかっ!」
三人が三人、楽しそうに話している姿を見ると、僕もついつい顔がほころびそうになる。だけど。
「僕はそれでも、ここで揃えられるなら、ここで揃えて……」
「却下」
「却下だね」
「さ、バス来てますから」
「え。ね、ねぇっ!僕の話、聞いてます!?うわっ!?」
無言のレヴィに小脇に抱えられて、僕はどこに行くバスなのかもわからないのに、無理やり押し込められてしまった。
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