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第68話 襲撃者(7)

 バスの一番後ろの席に四人が並ぶ。窓際から僕、レヴィ、エミール、エリィの順に座る。普通ならきっと五人座れるだろうに、小柄な僕がいても、この三人の体躯ではこれでいっぱいだ。  そして、僕たち以外の乗客も乗り込んでくる。当たり前だけれど、みんな獣人ばかり。  窓の外を見ながら、ふと思い立つ。 「レヴィたちくらい魔力があるんだったら、こんなバスとかの移動手段使わなくても別の方法とかあるんじゃないんですか?」 「例えば?」  エミールが面白そうな顔で覗き込む。 「……魔法の箒とか、あと魔法の自動車みたいのは?」  僕が頭に浮かぶのは、自分が目にしたことがあるものだけだけど。 「確かに魔法の箒があれば、少しは楽かもしれない。しかし、あれは基本的に一人乗りだし、長時間の移動には向いていない。箒そのものの魔力だけでなく、魔法使い自身の魔力も利用して動くものなのは、お前も学んだだろう」  魔道具の授業で、その使い方や仕組みは学んだのを、レヴィに言われて思い出す。 「そもそも、こんな田舎の土地に魔法に関わるような道具が売ってたり、置いてあるわけないだろ」  言われてみれば、魔法の道具を取り扱っている場所というのは、決められた地域にある魔法街の中でしか販売が許されていない。人間の国では、一般的にはあまり魔法使いの存在は認識されていなかったし、そういう場所があるのも知らなかった。だから僕も、魔法学校に来るまで物語の中だけの存在だったのだ。それは、獣人の国でも状況は変わらないのだろうか。 「その手の一流の道具をそろえるためにも、一度、首都まで戻りたいくらいなんだ」 「首都!?」  僕は獣人の国の地図を思い出す。今いる場所は、その中でも一番端の村で、首都はここからもっと北西の奥のほうだったはず。僕はそんな悠長なことを言い出したレヴィに思わず声を荒げてしまう。 「首都なんて言ったら、今日中になんて行けるわけないじゃないですかっ」 「だから、せめてここから近いところで大き目な街に行きたいと言ってるんだよ」  苛立っている僕を宥めるように、エリィさんが優しく言う。そう言われても、やっぱり、僕の中では焦りがどんどん膨らんでいく。いつもにこやかに笑っていたおじいさんとおばあさんが、僕の頭の中をよぎる。 「エリィ、一応、親父に連絡いれといて。どこかでうちの魔法商人の誰かと合流できるように手配しておいて、と」 「わかりました」 「魔法商人?」  聞きなれない言葉に、僕は隣に座るレヴィを見上げる。

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