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第77話 襲撃者(16)
駅から少し離れたところに、立派なホテルがあった。そこは、レヴィたち王家の御用達らしく、レヴィが僕を抱えたまま入っていくと、ホテルの人は何も言わずに深々とお辞儀をすると、最上階のスイートルームへと案内してくれた。
あまりの豪華さに、レヴィの腕の中から降りることを忘れて、部屋の中を呆然と見ていると、レヴィがゆっくりと僕を下ろした。
「うわぁ……」
部屋の中の豪華さに目を奪われ、その上、いくつもの部屋に分かれているものだから、ついついワクワクして、僕があちこち見て回っていると、出入り口のほうからレヴィの声が聞こえた。
「ノア、俺たち、ちょっと出てくるから、とりあえず、ここで留守番をしていろ」
「えっ!?」
慌てて、出入り口のほうに戻ってみると、すでにレヴィたちの姿はなくて、僕一人だけが残される形となった。ぽつんと広い部屋に残されると、急に寂しさがわいてくる。昨日までは一人でもなんとか頑張れたのに。
「あっ」
僕は思い出した。僕は一人なんかじゃなかったことを。
カバンの奥に仕舞い込んでいた透明な小箱を取り出す。中には子犬状態のポップンがスヤスヤと寝ていた。気持ちよさそうな寝顔を見たら、起こしてしまうのは少しばかり可哀そうかな、とも思った。
「ポップン、ごめんね」
小箱の鍵をはずすと、ぶわんと煙が噴き出たと同時に、『わふん!』という鳴き声とともに、ポップンが僕に抱き着いてきた。その勢いに負けて、僕は床に押し倒されてしまった。
「アハハ、起こしちゃってごめんね」
ポップンの首に抱き着いていると、べろべろと僕の顔の半分を舐めまくってきた。舐められたところがべとべとになってしまったけれど、ポップンの愛情表現だと思ったら、嬉しくてそのまま身を任せる。ようやく満足したのか、舐めるのをやめると、ハァハァと息をしながら、僕の顔を見下ろしている。
「ポップンがいてくれてよかった。こんな広いところ、僕一人じゃ、なんだか寂しくなっちゃって」
たった一日だというのに。レヴィたちの存在感の大きさに、今更ながら気づかされる。
ポップンは僕の上からどくと、隣に座りこんだ。早く戻ってこないかな、と心の中で思いながら、ポップンの温かな毛並みに倒れこむと、僕はだんだん眠くなってきた。
「……ポップン、ちょっとだけ眠るね」
僕は床に座ったまま、ポップンのそばで眠り込んでしまった。
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