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第78話 襲撃者(17)

***  レヴィたち三人はホテルを出ると、目指す場所へ向かって恐ろしいほどのスピードで走り出した。彼らの後をつけるものがいたとしても、そのスピードについていけるものは、そうそういなかっただろう。  そんな彼らが向かったのは、賑やかな駅周辺からかなり離れた住宅街の中にある古い教会だった。現代的な住宅が多くある中、石造りの小ぶりな古い教会の存在は、そこだけが時間が遡ったような雰囲気を醸し出していた。  この教会は王室との昔から深い繋がりがあり、今の司教はその昔王室から離れた一族の末裔であった。   「皇太子、よく参られましたな」  レヴィが先頭にたって勢いよく重い扉を開いたと同時に、薄暗い教会の中に立つ年老いた白い狼の獣人が深いブルーのローブを纏って出迎えた。あまりのタイミングの良さに、レヴィは微かにたじろぐが、相手はそれには気づく様子もない。  「久しぶりだな。ローウェル司教」 「はい。お父上はお元気ですかな」  三人が教会の中に入り、ドアを閉めると、教会内は一気に薄暗くなる。ステンドグラスから差し込む光があるとはいえ、十分な明かりとは言えない。身体の大きい三人のせいもあって、広くもない教会の中は一気に狭苦しくすら感じるようになる。  レヴィは、フンッ、と鼻を鳴らしながらローウェル司教にめんどくさそうに答えた。 「知らん。もう、しばらく戻ってないからな」 「まったく、そういう言い方を聞くと、やはりあなたはお父上とそっくりだと思ってしまいますよ」  呆れたように言いながらも、とても懐かしそうにレヴィを見上げた。  ローウェル司教と今の国王は、国王が魔法学校にあがる前、ともに同じ家庭教師で学んだ幼馴染のようなものだった。ローウェル司教には魔法の才がなく、早い時点で神学校に進んだ。それ以来、ともに過ごす時間は減ったものの、時折思い出したかのように連絡をとりあっていた。  そして、あの事件のあった、ノアとレヴィの婚約のパーティにも呼ばれていた一人だった。 「それより、ここにムハーズルは来ていないか」  この街で待ち合わせる場所として、王室とも繋がりのあるここが一番目印となる場所であった。年老いたムハーズルとはいえ、魔法の道具を使いこなす魔法商人の彼であれば、すでに着いていてもおかしくはなかった。 「ムハーズルは来ていませんが、その代理という者でしたら、先ほどまでおったのですが」 「代理?」  レヴィたちは顔を見合わせた。  ムハーズルは基本、一匹狼。代理をたてるくらいなら、自分で動くし、それが無理なら、お得意の魔法の道具で直接連絡をしてくるはずだった。

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