80 / 160
第80話 襲撃者(19)
「ここは、どこだ」
「この映像だけでは、わかりませんね。道路が舗装されているのと、建物の感じで、どこか都会の街のどこか、くらいしか、予想がつきません」
「そもそも、なぜ、ムハーズル殺されなければならない?」
「さぁ、それは。彼個人の問題なのか、それとも、また別の問題……まさか」
「ノアか!?」
三人は、顔を見合わせると、慌てたように教会から飛び出そうとした。一番にドアのノブを掴んだのはレヴィだった。
「な、何っ!?」
先ほどは、簡単に開いた大きなドアがびくともしない。ガンガンとドアを開けようとするが、まるで鉄ででもできているかのように、壊れもしない。
「落ち着いて」
エリィがレヴィの肩に手をやる。
「私たちが司教様と話している間に、外にいた奴が魔法をかけたのでしょう。私に気取られないほどとは、かなりの使い手です」
そう言いながらドアに手を翳し、ブツブツと呪文を唱える。しばらくして、パリン、という何かが割れるような音とともに、ドアがゆっくりと開いていった。
「戻るぞっ」
レヴィとエミールはあっという間に教会から去っていった。
「あっ……もう、二人ともせっかちですね」
「君は、エリィだったかね」
「はい。司教様。恐れながら、少しお時間をいただいて、記憶の蓋を開かせていただいてもよろしいでしょうか」
「ああ……何が起こってるのか、教えてもらえるかね」
「……そうですね。ちょっと今は急いでいるので、落ち着いてからでもいいでしょうか」
「ああ、すまん、そうだな。じゃあ、やってくれたまえ」
「すみません」
エリィは、司教を座らせると、彼の手をとり、静かに呪文を唱え始めた。
司教はその呪文に合わせるかのように、徐々に顔を歪ませていく。そして二人の間に、モワモワとした煙の球が浮かび上がった。徐々にガラス玉のような膜を帯び、中の煙は消えていく。そして、そこに映し出されたのは。
『……ムハーズルの使いで参りました……』
黒いローブを羽織った黒豹。ザイル・マフだった。
ともだちにシェアしよう!