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第80話 襲撃者(19)

「ここは、どこだ」 「この映像だけでは、わかりませんね。道路が舗装されているのと、建物の感じで、どこか都会の街のどこか、くらいしか、予想がつきません」 「そもそも、なぜ、ムハーズル殺されなければならない?」 「さぁ、それは。彼個人の問題なのか、それとも、また別の問題……まさか」 「ノアか!?」  三人は、顔を見合わせると、慌てたように教会から飛び出そうとした。一番にドアのノブを掴んだのはレヴィだった。 「な、何っ!?」  先ほどは、簡単に開いた大きなドアがびくともしない。ガンガンとドアを開けようとするが、まるで鉄ででもできているかのように、壊れもしない。 「落ち着いて」  エリィがレヴィの肩に手をやる。 「私たちが司教様と話している間に、外にいた奴が魔法をかけたのでしょう。私に気取られないほどとは、かなりの使い手です」  そう言いながらドアに手を翳し、ブツブツと呪文を唱える。しばらくして、パリン、という何かが割れるような音とともに、ドアがゆっくりと開いていった。 「戻るぞっ」  レヴィとエミールはあっという間に教会から去っていった。 「あっ……もう、二人ともせっかちですね」 「君は、エリィだったかね」 「はい。司教様。恐れながら、少しお時間をいただいて、記憶の蓋を開かせていただいてもよろしいでしょうか」 「ああ……何が起こってるのか、教えてもらえるかね」 「……そうですね。ちょっと今は急いでいるので、落ち着いてからでもいいでしょうか」 「ああ、すまん、そうだな。じゃあ、やってくれたまえ」 「すみません」  エリィは、司教を座らせると、彼の手をとり、静かに呪文を唱え始めた。  司教はその呪文に合わせるかのように、徐々に顔を歪ませていく。そして二人の間に、モワモワとした煙の球が浮かび上がった。徐々にガラス玉のような膜を帯び、中の煙は消えていく。そして、そこに映し出されたのは。 『……ムハーズルの使いで参りました……』  黒いローブを羽織った黒豹。ザイル・マフだった。

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