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第83話 再会(2)

「あら、もう、落ち着いたんでしょうか……お顔の色は、まだ青白いようですが……」 「あのっ」 「あ、はいはい。私ですね。私はヨキと申します。ノア様のご用事を承ります」  にこにこと微笑みながら、僕のそばに立つとベッドの脇に置かれていた青いガラス製のピッチャーから、同じように青いグラスに水を注いで、僕に渡してきた。 「どうぞ。少し水分をおとりになって、落ち着いてください」 「あ、はい……」  ヨキさんが優しく言うので、僕は素直に受け取ってしまった。こんな手首に手錠のようなものを付けられているのに。  コクコクと飲み干しながら、周囲をもう一度見回す。広い部屋のわりに、高いところにずいぶんと小さい窓がある。窓から差し込む日差しから、今は昼間なのがわかるだけ。部屋の明かりはそこからしか入ってこないからか、せっかく豪華な部屋なのに、くすんだ色合いに感じてしまう。  そして自分の格好が学校の制服から、白くてシンプルなワンピースみたいなパジャマ?ネグリジェとでもいうんだろうか、そういう格好に着替えさせられていたことに気が付いた。まるで病人みたいだ。  飲み干したグラスを、手を差し出したヨキさんに戻す。 「ここは、どこなんですか?それに、これって……」  僕は手首の手錠をヨキさんに見せる。だけど、ヨキさんは、それには触れず、僕の額に手をあてる。 「人の体温はよくわからないんですよねぇ……あの人たちのも、よくわからなかったし……」 「あの人たち……え、ここ、僕以外にも人間がいるんですか?」 「まったく、先生も早く来てくれればいいのに……」 「あのっ、僕の話聞いてます!?」 「ああ、はいはい、人間、いますよ。けして多くはありませんが」  そう言いながら、僕のことを再びベッドに寝かせようとする。 「え、ぼ、僕、もう起きられます」 「いえいえ、たぶん、もうすぐ、また眠くなりますから」 「起きたばっかりですっ」 「大丈夫、横になったらすぐに眠気がおきますから」 「そんな……」  ヨキさんの力は思いのほか強く、僕の身体は簡単に横たえられてしまった。そして、驚くことに、彼の言ったとおりに、眠くなってきた。 「……な、なんで……」 「大丈夫ですよ、ゆっくりお休みください」  そして僕の意識がきれる間際、ポツリと悲しそうな声でこう言った。 「あなた様は、主人の大事な人の息子なのです……何があっても私がお守りしますから……」  ヨキさんの主人って誰?僕は言葉にならないそれを胸の中で呟いた。

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