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第89話 再会(8)

「ほほぉ……」  自分でも何が起きたのかわからず呆然としてるのに、目の前のナディル様は余裕の笑顔で、僕を見下ろしている。 「それが、お前の本来の姿か……なんと美しい……犬なのが残念ではあるが……」  そう言いながら、僕の顔に手を伸ばしてくる。 「い、嫌だっ」  そう声が出ると同時、再び火花が散る。  そして気付いた。身体が動く!?  僕は、ナディル様から逃れようと、ベッドの上をくるんと身を翻し、反対側に降り立った。 「おや。自力で魔法を解いたか。確か、ヨキの調べでは魔力がほとんどない、という話だったはず」  ゆっくりと立ち上がって、僕のいるほうに歩み寄ってくる。その楽しそうな顔に、僕は足がガクガクしてくる。 「その強い拒絶反応によってのみ、解放されるのか。しかし、呪文を唱えるわけでもなく、それでこの力。フローラとあの男の力か……フフフ、やはり、フローラには我が息子を産んでもらわねばならぬなっ」  そう言い終わると同時に、ナディル様が再び何か呪文を唱え始めた。  僕はその言葉の意味はわからなかったけれど、そのまま、そこにいちゃいけないということだけはわかった。部屋のドアに向かって駆け寄る僕。ドアのノブを回すけれど、ガチャガチャと音をたてるだけで、開いてくれない。 「開けてっ!開けてぇ!」  ドンドンとドアを叩くけれど、誰も反応すらしてくれない。他に出口と言えるのは、あの高いところにある窓だけ。目に涙を浮かべながら、振り向くと、もう真後ろにナディル様が、厭らしい顔で立ちふさがった。 「ひぃっ!」  舐めるように僕を見る視線が、気持ち悪くて仕方がない。 「今のお前には魔法をかけようとしても、はじかれるだろう。だが、今、私自身にかけた保護の魔法では、お前の小さな火花程度では、私を害することなどできない。さぁ、いい子だ。大人しく私に抱かれるのだ」  ドアを背にして逃げ場のなくなった僕。無意識に両手で自分を守ろうとして自分の身体を抱きしめる。その手をナディル様に捕まれそうになった。 「いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」  僕がしゃがみ込んだと同時に、ドドンッという激しい爆発音がした。 「クソッ!何が起こったっ!?」  思ったよりも離れたところでナディル様の鋭い声が聞こえた。  まだ自分の手が掴まれてはいないことがわかって、目を上げてみると、部屋の中は白い煙で充満していた。 「うわっ、ナ、ナディル様っ!?大丈夫ですかっ!?」  いきなり、背後のドアが開いた気配とともに、ヨキさんの声が頭の上から聞こえてきた。  逃げるなら今しかない。自分の荷物や格好のことなど考える余裕もなく、僕はしゃがんだまま、部屋に駆け込んだヨキさんを避けて廊下に這い出した。

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