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第99話 再会(18)
僕は、ふと、ハザール家での出来事を思い出した。
「そういえば、僕、たぶん、一瞬だけ、魔法なのかなんなのかわかんないけど、襲ってきた相手をはじきとばしたみたいなんだけど……これも魔法だったりするのかな」
思わず、おじいちゃんに真面目に聞いたのだけれど、「襲われただとっ!?」と、一斉に声をあげて、みんなの視線が僕に集中した。
「え、あ、う……うん……」
あまりにも息が合いすぎてて、びっくりする。
「誰にっ」
僕を抱きかかえていたレヴィが、とても怖い目付きで僕を見る。身体中から怒りのオーラを発してるレヴィに、僕の身体は恐怖で慄いてしまうい、言葉が出てこない。
「誰にだっ!」
レヴィの怒鳴り声に、ビクッと身体が震え、涙が零れた。
「こらっ、レヴィ、お前、怒りすぎだ。ノアが悪いわけじゃないだろう」
「イテッ」
隣に座ったエミールに頭を殴られるレヴィは、ようやっと僕が泣き出していたことに気づくと、今度はオロオロしだした。
「ごめん!すまん!許せ!」
「うううう……」
レヴィのモフモフな首もとに顔をうずめる。涙でべちょべちょになっても知らない。そんな僕の頭をなでるレヴィが、小さくため息をついた。
「ノア……それは、あの屋敷の者かい?」
おばあちゃんが、優しい声で聞いてきた。だから、僕もそのままの体勢でコクリと頷く。
「屋敷?ノアは、貴方方が連れ去ったわけではないのですね?」
「当たり前だろう!連れ去るにしたって、その犬ごと連れ去るわいっ」
フンッ!と鼻息荒く答えるおじいちゃん。
「では、誰が」
「ハザール家の者だ」
おじいちゃんの苦々しい声に、僕は涙で濡れた顔をあげた。と同時に、レヴィたちの空気が一変した。さっきまでの怒りのそれとは違う、もっと、怖い冷たい空気が部屋の中に充満したように感じた。
「フローラは、あの屋敷に閉じ込められておる」
「なんですって!?」
エリィさんが叫んだ。そして、レヴィとエミールには、まるで蒼い炎が吹きあがるみたいな怒りのオーラを発しているよう。
「どういうことだ。なんで、ハザール家の者が関わってくるのだっ」
「そういえば聞いたことがある。確か、当主のナディル・ハザールは、魔法学校でフローラとリーナスと同じ学年だったはず」
「……ナディル様は……」
僕がポツリと呟くと、再び、僕に視線が集まった。
「……ナディル様は、母様のこと好きだったのかな……」
そして、再び、あの僕を食べてしまいそうな顔のナディル様を思い出して、身体が震える。
「僕の顔を見て……切なそうな顔で母様の名前呼んでた……」
でも、それだけじゃない。
レヴィたちは、僕が次に何を話すのか、じっと待っている。
「……ナディル様は……母様に子供を産ませたいみたい……それが叶わなければ……僕に……」
レヴィの服をぎゅっと握りしめると、僕はレヴィの腕の中で小さく震え続けた。
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