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第100話 奪還(1)
ドアを開けた時は、とっても小さい小屋に感じたのに、夜、寝ることになった時に、一人一人に部屋が宛がわれたのには驚いた。どうもおじいちゃんの魔法で、いくつかの部屋が隠されていたようだった。
それぞれの部屋に別れるところで、レヴィは僕を自分の部屋に連れ込もうとしたけれど、おじいちゃんの鋭い眼光に、舌を鳴らして諦めてくれた。
本当は、レヴィに抱きしめられるのは嫌じゃない。すごく安心できるから。だけど、あんな、『婚約者』とか言われちゃったら、ちょっと意識してしまう。前だったら、僕は『抱き枕』なんだろうな、とか思えたけど。だから、おじいちゃんには、少しだけ感謝。
僕はポップンと一緒のベッドで眠り、深く、深く眠ることができた。おかげで、朝には、すっきりとした気分で目が覚めた。
椅子の上には、僕が着られるような服とフルブライトさんに渡されたリュックが置かれていて、ホッとする。このパジャマのまま、行動しなきゃいけなかったらどうしよう、と、思っていたのと、リュックのことが気になっていたのだ。もしかして、ハザール家に置き忘れてきたんじゃないか、と心配だったのだ。この様子だと、ポップン同様、ホテルにあったものをレヴィたちが持ってきてくれたのかもしれない。
「おはよう」
朝、リビングに行くと、僕以外全員がテーブルの周りに座っていて、声をかけた僕に一斉に視線が集中して、ビビッてしまう。
「おはよう、ノア。ほら、ここに座れ」
レヴィが自分の隣の椅子を引きながら、穏やかな声で、僕の名前を呼んだ。僕はコクリと頷くと彼の隣の席に座った。
「ほら、ノアの好きなパンケーキ。ハチミツもたっぷりかけてお食べ」
おばあちゃんが差し出した皿には、ベリーとクリームがたっぷりの僕の大好きなパンケーキがのっていた。
「うわぁぁ。久しぶりだ!いただきます!」
僕の目はきっと嬉しくてキラキラしてたに違いない。おばあちゃんと、おじいちゃんが満面の笑みを浮かべながら、僕をジッと見つめてる。
「ノアは、こんな甘いのが好きだったのか」
うんざりしたような声のレヴィに、僕はちょっとだけ恥ずかしくなった。十五歳にもなって、こんな甘い物を嬉しそうに食べる男って、やっぱり変なんだろうか。僕は、チラリとレヴィのほうを見た。
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