103 / 160

第103話 奪還(4)

「いや……簡単に言ってしまえば、魔法省で手に負えないような魔法に関するトラブルに関して、わしとばあさんで、コンサルタントのような立場で色々と仕事をしてきていたんだよ。それも、もう二年も前の話だ。その頃だって、わしらが手を出さなきゃいけないようなトラブルなんてのは、ほとんど起きていなかった」  ため息をつきながら自分の席に戻ったおじいちゃん。その目の前に、おばあちゃんが新しいコーヒーを置いた。 「だから、魔法省のほうにはフローラを探しに出る際に、もう、仕事は受けないという話をしてあったはずなんだがな」  おじいちゃんは苦々しく言いながら、コーヒーカップを口にした。僕は、そんな話は初めて聞いた。そもそも、魔法使いだったことすら知らなかったわけで、おじいちゃんたちが、どんな風にお仕事をしてたのかすら、想像できない。だって、家では普通におじいちゃんと、おばあちゃんだったのだもの。  僕は驚きながら、おじいちゃんとおばあちゃんを見つめる。 「仕事って……それじゃ、その仕事をしなくて、収入とか大丈夫なの?」  僕は心配になりながら、そう聞くと、おじいちゃんも、おばあちゃんも、顔を見合わせると楽しそうに笑いだした。 「大丈夫だよ。我々には若い頃に働いて得た十分な貯えがある。そもそも、魔法省の仕事だって、ボランティアのようなもんだ。その仕事がなくなったからといって、生活できなくなるわけでもないしな」 「そうよ。ノア。私たちのことは気にしなくて大丈夫」 「でしたら、なぜ、魔法省は貴方方をノアに探させたのでしょうか……」  エリィさんが、訝し気におじいちゃんに尋ねた。 「今、特に大きな事件が起きてるという話は聞きません。むしろ、平和そのもので、それこそ、ナレザール様ほどの魔法使いが必要とされるような事件などありません。それなのに、貴方方お二人を探させるというのが、私には解せません」 「フルブライトとかいう奴の独断か?」  腕を組んで顎に手を当てて考え込むレヴィ。その姿に、僕はなぜだか、ドキリとしてしまう。なんだか、レヴィがカッコよく見える。いや、今までだってカッコよく見えてた。だけど、それが、なんだか、いつものとは違う気がする。

ともだちにシェアしよう!