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第107話 奪還(8)
レヴィが真剣な顔で、おじいちゃんの方を見つめる。
「……今までは、じいさんたちは、あいつらに追いかけられても、逃げ切ってたんだよな」
一生懸命に何か考えてくれてるのがわかるから、僕は、そばにあったレヴィの腕を握りしめる。そんな僕に気付いたのか、レヴィは僕のほうを見ると、僕の頭を軽く撫でた。
「今回のようにしつこく追いかけられたのは初めてだ。いつも、途中まででたいがいは振り切ってたからな」
「今までと違う点といえば、ノアがいること、か」
そう言われて、すごく不安になった。やっぱり、僕に何かついてたりするんだろうか?
「……猫どもが急接近してきたのは、魔法省との話が終わってからだったな」
レヴィの蒼い目がキラリと光る。
「まさか。魔法省とハザール家?そもそも、あの魔法の鏡での連絡方法じゃ、場所までは特定などできん」
「しかし、ノアと共にいることを相手は知っている」
ハッとした顔のエミールが慌てて、僕の荷物の入っているリュックを掴むと、中身をテーブルの上にぶちまけた。中から出てきたのは、最初に渡された携帯電話や連絡用の使い魔のカプセルのセット、ポップンの眠っている小箱、大きな財布と小さな財布。そして、魔法の地図に懐中電灯だけだった。エミールはテーブルに転がっている携帯電話を手に取った。
「携帯電話は電源を切っているからGPSは使えないか」
そして僕は唐突に思い出した。
「あっ!魔法の地図!」
「魔法の地図?」
レヴィが地図を広げると、獣人の国の中に小さな赤い矢印が浮いている。それでも、この縮尺じゃ、あまりにもざっくり過ぎて、どこだかよくはわからない。
「これ、僕の位置を把握するのに使うって、フルブライトさんが言ってたんです」
「んー、可能性としては、対になる地図が存在して、それで場所を把握してるのかもしれないが、これだけじゃ、ピンポイントには把握できそうにないなぁ」
エリィさんが訝し気に地図を見た後、床に落ちているリュックを拾い上げて、中を覗き込み、ゴソゴソと中に手を入れる。いくらでも荷物は積み込めると言われたけど、まだ試すほども荷物は増えてなかったことに気付いて苦笑いする。すると。
「……あった」
小さいくそう言いながら、顔をひきつらせたエリィさんの手のひらに、とっても小さな黒い金属の小箱のようなものが置かれていた。
「え?何、それ」
僕は慌ててエリィさんの傍に近寄ると、その小箱を凝視した。こんなの見たことない。
「リュックの中に、小さなファスナー付きのポケットがあった。その中に」
「これが、俺たち、というかノアの行動を把握してたってことか」
「え?あの地図は?」
「カモフラージュか何かかもしれないな」
でも、それだって、僕の正確な位置を把握したかったからかもしれないし。
「てことは、ここの場所もあいつらに筒抜けなんじゃ」
レヴィがギリリと歯を食いしばる。おじいちゃんは、さっきフルブライトさんに怒った比ではないくらいに怒りの炎のようなオーラが出ているような気がする。
そして、ジロッとレヴィたち三人を睨みつけた。
「お前らの中で、一番身体能力に長けているのは誰だ」
「俺だ」
レヴィがおじいちゃんの怒りの眼差しを物ともせずににらみ返した。
「魔法は」
「能力だけでいえば、エリィが一番だろうが、身体能力とのバランスで考えたら、俺だ」
レヴィの言葉に、僕は不安そうな顔をしてたのかもしれない。僕の身体を抱きしめると、小さく「大丈夫だ」と言ってくれた。
「私の考えが、わかるか」
「ああ、これを奴らが襲ってくる前に、別のところに移動させようってんだろう?」
僕のリュックをつまむとその中に、黒い金属の小箱と一緒に、テーブルの上に出ていたもの、僕の小さいお財布とポップンの小箱をのぞいて全てをポンポンと放り込んだ。
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