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第108話 奪還(9)
レヴィとおじいちゃんは玄関先で何か話をした後、おじいちゃんが使い古された魔法の箒を手渡した。レヴィはそれを受け取ると、僕のリュックを肩にかけたまま、何も言わずに出ていった。
僕は玄関脇の窓のカーテンの隙間から、レヴィを見送るつもりでいたけれど、外を覗いた時点では、もうレヴィの姿など影も形もなかった。
「……おじいちゃん」
隣に立つ厳しい顔をしたおじいちゃんを見上げる。
僕が、あいつらに居場所を教えていた、ということがどうしようもなく悔しかった。その後始末をレヴィにさせてることも、僕自身の不甲斐なさを強烈に思い知らされた。
そして、不安にかられる。レヴィは本当に大丈夫なのだろうか、と。
「あいつのことなら、すぐに戻ってくるじゃろ」
おじいちゃんは優しく微笑みながら、僕の頭を軽く撫でると、部屋に戻るように背中を押した。
部屋に戻ると、おばあちゃんとエリィさんは真剣に何かの本を開きながら話をしている。エミールは一人、窓際で外を伺っていた。
「ソフィア、どうした」
「あ、あなた。いえ、エリィさんと薬草の話をしていただけよ」
「すみません、この本棚を拝見したところ、薬草関係の書物が多かったのと、部屋の匂いが気になりまして」
少し興奮気味に話すエリィさん。今まで、あまり興奮している姿を見たことがなかったから、そんなエリィさんを新鮮に感じた。
「この家はフローラがハザール家に囚われてることを知ってから、あの子を助け出して目覚めさせる方法を研究するために用意した部屋だ」
「あの山小屋は?」
「あちらのほうが、本来の緊急避難する場所だったのだよ。それなのに、あちらのほうが先に知られてしまった」
「……ごめんなさい」
僕の存在が、おじいちゃんたちを困らせてる。おじいちゃんの言葉に、申し訳なくなった。
「お前のせいじゃないよ」
おばあちゃんがそっと僕を抱きしめる。僕はそのままキュッと抱きしめ返した。
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