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第114話 奪還(15)

 レヴィたちの行動は決まった。  レヴィとエミールの二人は、裏門のほうへ回り込み侵入する。木々の生い茂った先、屋敷の裏側は、大きな溝に囲われていて、あまり大きくない一本橋が屋敷へと繋がっている。大人数では追いかけては来ないかもしれないが、屋敷の中に残っている者たち注意を裏門側へと向けさせている間に、ナレザールとエリィが箒で塔への侵入を試みるというものだった。 「おぬしらが捕まったら、意味がない。適度に混乱させたら、すぐに撤退しろ」 「……じいさん」 「お前に、じいさん呼ばわりされるほど、年寄りではないわ」  ナレザールの言い草に、レヴィは苦笑いを浮かべる。それはエリィたちも同様だった。 「とりあえず、防犯カメラも備えているだろうから、それらに映らないよう、目くらましの魔法をかけておこう」 「それくらいなら自分で」 「何が起こるかわからん。余計な魔力は使わずにおけ」  ナレザールの厳しい声に、レヴィの反論は抑え込まれる。確かに、相手が相手だけに、そう簡単に事はすまない可能性のほうが高い。低い歌声のような呪文によって、レヴィとエミールは灰色のような煙に包まれる。確認するために、レヴィは自分の手を見ようとしたが、自分の手すら、よく見えない状況に、一瞬不安感がよふぎる。 「なんだ、今更、怖くなったか」  少し挑発するような言い方で、レヴィを見つめるナレザール。しかし、それにはのらずに、フッと笑いをこぼす。 「いや、さすがだな、と思ったまで」 「フンッ」  鼻を鳴らしたナレザールに、若者三人は小さく笑った。そんな彼らを内心、頼もしく思うナレザール。そして、フローラが囚われているだろう塔を睨みつけた。 「では、行くか。おぬしらは、我々が塔に接近したのを確認してから、侵入しろ」 「わかった」  その場を静かに離れていくレヴィたち。 「ナレザール様」  エリィの力強い声に後押しされ頷くと、ナレザールは手元の箒に呪文をかける。すると、細身の箒が、ぐぐんと太さを増し、箒自体の大きさが変わった。 「では、私が前に乗ります。ナレザール様は後ろに」 「うむ。すまんのエリィ」 「いえ。ノアのためですから」  二人はニヤリと笑うと箒にまたがり、徐々に上空に浮かび上がっていった。

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