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第122話 目覚める白金(4)

「この魔法が効いてるのは一日です。その間に、ハザール家の追手をできるだけ、首都のほうの監視から引きはがします。同じく、レヴィのほうも一日くらいしか効きませんから、それ以降は私の部屋の中に籠っていてください」 「わかった」  おじいちゃんの姿をしたエリィさんが真剣な顔で、エリィさんの姿をしたレヴィに注意した。姿は変わっていたけれど、声は本人のものと変わらない。それに気づくと、なんだかホッとした。 「それと、レヴィ、うちについたら、おしゃべりも禁止です。わかってると思いますが」 「大丈夫だ。ずっと、ノアと部屋に籠ってるから」  そう言ってニヤニヤするエリィさんの姿のレヴィ。エリィさんだったら、こんな表情はしないかも。そういうのにも気づいてしまう。 『ナレザール様、いらっしゃいますか』  鏡の向こうから、低くて心地よい声が聞こえてきた。そこには、エリィさんにそっくりだけれど、少し年配の栗色の狼の獣人が立っていた。 「ああ、ヒデュナか。すまない。迷惑をかける」  おばあちゃんの格好をしたおじいちゃんが返事をする。 『え?ソフィア様?』  困惑したような声に、僕たちは、つい笑ってしまった。 「わしじゃ、今、皆で偽装の呪文をかけたのだ。エリィの姿をしておるのがレヴィ殿じゃ」 『ああ、そうでしたか。では、そちらにいらっしゃるのが……』  ヒデュナさんは、とても嬉しそうな顔で僕を見つめている。小さい頃に、会ってはいるのだろうけれど、僕の中では会っている記憶はない。そんな顔で見られると、なんだか僕の方が照れくさくなる。 「わしの孫の、ノアじゃ」 「は、はじめまして」  僕は、小さく頭を下げて挨拶をした。すると、ヒデュナさんが、目に涙をためながら、うんうん、と頷いた。 『ところでフローラは』  ヒデュナさんが心配そうに聞いてきたので、僕は腕の中の木箱をそっと開けた。 『ああ、なんてことだ……』 「ヒデュナ、わしらが戻るまで、この子たちを頼む」  おじいちゃんがそう言うと、ヒデュナさんは力強く頷いた。  僕とレヴィは、みんなと再会を約束をして、鏡を超えて宿屋の部屋へと移動した。 「おじいちゃん、おばあちゃん、待ってるからね」  鏡越しにそう言うと、二人はニッコリと笑って頷いた。 『それじゃ、この鏡の道は塞ぐから、少し離れていなさい』  おじいちゃんの言葉通りに、鏡から離れると、パリンッ!と大きな音がしたと同時に、向こう側の景色が消え、僕たちの姿が映る普通の鏡へと戻っていた。  僕はしばらくそこを動くことは出来なかった。 「ノア様、レヴィ様、とりあえず、我が家へと向かいましょう」 「ああ、ヒデュナ、世話になるな」 「あはは、エリィの姿で、話をされますと、なんだか奇妙な感じがしますなぁ」  宿屋の薄暗い廊下を、二人が親し気に話している姿を見ながら、僕は木箱を大事に抱きしめ、後をついていった。

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