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第124話 目覚める白金(6)

ヒデュナさんの家なら絶対に安全なのかな、と思っていたけれど、念には念を入れて、ということなのだろうか。僕はレヴィの服の裾をギュッと握りしめる。 「……行くぞ」  小さくそう言うと、僕の肩に手を回して、前へ進むよう促した。  広いお屋敷の中、僕たちが足を進めるたびに廊下の電灯が点き、通り過ぎると消えていく。どこまで行くんだろう、と不安になった頃、一つの部屋のドアの前にたどり着く。レヴィはゆっくりとドアを開けて「入れ」と僕の背中を優しく押した。  部屋の灯りが点くと、そこは、たくさんの書物が壁いっぱいに積まれた、書庫みたいな部屋だった。 「わぁ、すごい」  テーブルの上にも乱雑に本が積み重ねられている。レポート用紙のようなものには、何か書きかけの文章があった。その紙を手にしながら、それを眺めるレヴィ。 「地方に籠る年老いた魔法使いに、古の魔法を学びに、よく遠出をしているようだ」  姿はエリィさんだから、なんだか違和感があるけれど、声と雰囲気が全然違う。僕は紙を見つめるレヴィのそばから離れ、窓際へと向かう。カーテンをそっと開けると、夜の庭園が月明りに照らされている。僕はベランダに繋がる窓を開けてみた。微かに花の香りが漂ってきているような気がする。 「昼間見たら、きっと綺麗なんだろうな……」 「ああ、ここの家の庭園は、いつ来ても癒される」  いつの間にかに僕の背後に立つレヴィが、ギュッと背中から抱きしめた。その温もりに僕はすごく安心する。 「身体が冷えるぞ。奥にエリィの寝室がある。いくぞ」 「はい」  僕はレヴィに促されて、部屋へと戻った。  彼がいるから、今日は、安心して眠れる。そんな気がした。

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