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第126話 目覚める白金(8)
「さぁ、起きて、ヒデュナたちに顔を見せに行こう。それに、フローラの様子も気になるだろう?」
「う、うん……でも」
僕はチラッとお尻の感触に意識が向いてしまうと、レヴィは苦笑いしながら、僕の頬に軽くキスをした。
「気にするな。そのうち落ち着く」
レヴィは僕から腕をほどくと、ゆっくりと身体を起こした。やっぱり、まだ少し痛みがあるのか、かすかに呻く声がする。僕も慌てて身体を起こすと、レヴィの腕に手を伸ばす。
「大丈夫?」
心配で見上げる僕と、レヴィの蒼い瞳がぶつかる。その瞳が揺れたと思った瞬間、レヴィが再び強く抱きしめた。こんな風に抱きしめて、身体は痛くないんだろうか、と、心配になる。
「あ、ちょ、ちょっと……レヴィ、まだ身体がっ」
「わかってる。でも、もう少し……」
そう言いながら、僕もレヴィの匂いに包まれてることに幸せを感じてしまってる。彼の毛皮の感触とその温もりに、そのまま、ずっと一緒にいたい、と思いながら、手を彼の背中へと回そうとした時。コンコン、という寝室のドアをノックする音がした。僕たちの動きは完全に固まった。
「……はい?」
レヴィが訝し気に返事をする。僕はレヴィの腕の中で、ギュッと抱き着く。レヴィの心臓の鼓動が、少しだけ早くなった気がする。
『エリィ様、朝食はいかがなされますか』
少し年配の男の人の声が聞こえてきた。僕とレヴィは顔を見合わせる。わざわざ、誰かが起こしにこの部屋まで来るとは思ってもいなかったから。そもそも、エリィさんの部屋に、誰でもが入れるのかと思うと、少し不安になった。
「いただくよ」
レヴィがエリィさんの声を真似て返事をした。あんまり、似てないと思ったけど、ドア越しだったら、勘違いしてくれるだろうか。
『……では、ご用意しておきます』
微かに部屋を出ていく足音を聞きながら、僕は息を止めていたらしい。さっきは気づかなかったドアを閉める音を聞いて、ようやく大きく息をはいた。
「……びっくりしたぁ……」
「俺もだ……でも、おかげで、こっちは完全に落ち着いたけどな」
僕たちは顔を見合わせると、肩の力を抜いて、クスクスと笑い合った。
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