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第132話 目覚める白金(14)
「それと、ノア様」
母様へ向ける優しい顔から一変、厳しい顔で僕を見る。
「貴方様のその姿、それはどういうことでしょう。どうも人間のお姿を固定させる魔法がかかっておいでのようですが。ナレザール様ですか?そんなことをしたのは」
「え、いえ……これも、たぶん母様です……」
「……まぁ。ノア様を守るため、でしょうか……フローラったら……」
大きくため息をつくと、母様のそばを離れ、僕の頭から足元へと掌をかざしていく。そして、ゆっくりと顔を綻ばせていく。
「フローラったら……レヴィ様をよっぽど気にいってたのね……」
彼女の言葉に、僕は頭をかしげる。それは、どういう意味だろう。
「そして、レヴィ様、貴方様もノア様のことを大切にされている、というのがわかりました」
「どういう意味だ。それは」
レヴィが眉間に皺を寄せながら、訝し気にマリー様に問いかける。そういう顔をする時、レヴィは少し怖くなる。
「……これは獣人の国の古くからある魔法の一つです。ナレザール様は、あまりご存じなかったかもしれませんね……フローラったら、よく知ってたこと」
クスクス笑いながら、レヴィの耳元で何やら囁いている。するとレヴィは驚いたような顔をしたかと思ったら、なんだか恥ずかしそうな顔になった。
「レヴィ?」
不思議そうに僕が問いかけると、僕のほうに目を向け、ゴクリと喉を鳴らした。その様に、僕は急に怖くなり、後ずさってしまう。
「大丈夫ですよ。ノア様」
相変わらず、マリー様はクスクス笑い続けてる。
「説明はレヴィ様がなさいますか?それとも……」
「……エリィの部屋はまずい。それに、この姿では……ノアが壊れてしまうんじゃ」
「こ、壊れるっ!?」
僕に何をしようと言うんだ?余計に僕は怖くなり、ジリジリと部屋のドアのほうへと後退していく。
「もう、レヴィ様ったら。ノア様が逃げてしまいますよ。そんなことを言ってると」
呆れたようなマリー様の声に、ようやく、僕の様子に気付いたレヴィ。慌てて、僕のところへ駆け寄り、ギュッと抱きしめる。
「ああ、すまん。怖がらせるつもりはない……」
レヴィの腕の温もりに、先ほどまでの恐怖心が少しずつ薄れていく。
「……レヴィ様、こちらでお部屋をご用意します。まだ、お体は本調子ではございませんから、ご無理はなさらないでくださいね」
「マリー……」
困ったような顔でマリー様へと視線を向ける。それは、そんなに大変なことなのだろうか。僕は不安になりながら、レヴィの顔を見上げた。
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