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第133話 目覚める白金(15)

 マリー様が用意してくれたお部屋は、お屋敷の中でも一番奥のほうにある客間。美しい壁紙と絵画に目を奪われる。そして部屋中に色んなバラのお花で埋め尽くされている。その匂いだけで酔ってしまいそうだ。  僕たちは、夕飯を食べ終えると、マリー様にこの部屋へと連れてこられた。ヒデュナ様は、まだ王宮から戻られていなくて、いつエリィさんの姿から元に戻ってしまうかと、ヒヤヒヤしながら食事をしてたから、僕は何を食べたのか、よく覚えていない。ただ、やたらとスタミナがつきそうなものばかりが出されていたような気がする。 「このお部屋は、国王ご夫妻もお泊りになったお部屋です。ここなら、誰にも邪魔はされませんから」  マリー様の嬉しそうな笑顔に、僕は首を傾げる。そしてレヴィの顔を見上げると、僕の視線から逃げるように顔を背けた。その様子に、僕は少しだけ寂しく感じて、レヴィの服の裾をギュッと掴んだ。 「では、お二人とも……上手くいきますように」  最後にそう言うマリー様の顔は、真剣な眼差しでレヴィを見つめていた。それだけ、大変なことなのだろうか。不安に思う僕の背中を、レヴィはゆっくりと部屋の中へと押した。  大きなベッドの前のテーブルには、ハチミツ色をした飲み物の入ったピッチャーと、果物やお菓子のようなものが置かれている。 「……ノア、まずは座って話をしようか」  エリィさんの姿のレヴィが椅子を引いてくれたので、僕は素直に座る。これからどんな話をされるのか、僕は不安で仕方がなかった。レヴィは、そんな僕を慮ってか、ハチミツ色の飲み物をグラスに入れると、それを僕に差し出した。 「……ありがとう」  僕はそれを受け取ると、少しだけ口をつけた。 「……甘い」  僕は目の前にあるお菓子を、ちょびちょび、つまみながら、レヴィが話し出すのを待っていた。 「……フローラがお前にかけた魔法は……半獣人に対してだけにしか効かない魔法なんだ」 「うん」 「……それは……なんというか……」  なんだか、いつものレヴィらしくなく、歯切れが悪い。それも、僕の顔を見ようともしない。僕の方が、苛立たしくなってしまうから、思わず、強めに問いただしてしまう。 「何なんですか?」 「……半獣人の貞操を守る魔法だ」 「テイソウ?」 「……あー、なんというか……性行為をさせない魔法、と言えばいいかな」 「へ?」  僕は『性行為』なる単語が出てくるとは思ってもいなかった。 「え?え?いや、でも、たぶんですけど、僕、普通に……その、なんていうか」  身体のことを言えば、普通に勃起はするから、なんというか、女の子とすることは可能なんじゃないかって、勝手に思ってた。 「ああ、人間としてのお前であれば、男でも女でもセックスすることはできるだろう。そう言う意味では、人間の女性を妊娠させることも可能かもしれない。しかし、半獣人としての機能である妊娠することは出来ない、ってことだ」

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