僕はレヴィの瞳の中に映っている姿に、小さく口を開けながら魅入っていた。 　今朝会った半獣人のルイさんは、真っ白な髪と耳、深いエメラルドグリーンの瞳で、清らかな美しさがあった。でも、今、僕が見ている姿は、彼とは対照的な、濡れた白金の長い髪と大きな狼の耳に、ハチミツのようなとろりとした金色の瞳。赤く熟れた果実のような唇で、蠱惑的な表情で僕を見つめ返してる。 「これが……僕……？」 　レヴィの頬に手を伸ばして、もっとその瞳の奥を覗き込みたい、と思った時、その中にいた半獣人は消え、再び、いつもの僕の姿が映し出された。 「あ、あれ？」 　濡れて少し黒ずんだような茶色い髪に、同じようにくすんだ金色の瞳、薄っぺらい貧弱な身体の僕の姿に戻ってしまう。 「どうし……て……？こんなっ……髪も目の色も……全然違う……」 　あまりに違い過ぎる自分の姿に、呆然としながら涙が零れてくる。レヴィやエミールは、獣人の姿同様、人間の姿であってもその高貴な容姿と、醸し出す雰囲気も変わらないのに、今の僕は、まったくの別物。 「なっ、んでっ……こんなにっ、僕は違うの……？」 　ポロポロと零れる涙を、レヴィが抱きしめながら舌で舐め取っていく。 「ノア、泣くな……たぶん、これもフローラの魔法のせいだろう」 　大きな掌が、何度も濡れた僕の顔を撫でる。 「母様の？」 「ああ……お前の半獣人の姿は、誰もが手に入れたくなるような美しさだ」 　レヴィは愛おしそうに僕を見つめる。それだけで僕は胸がどきどきしてくる。 「それはそうだ。リーナスとフローラの息子なのだからな。そのまま人の姿になったとしたら、恐らく……人さらいにでも攫われて、どこかに売り飛ばされていてもおかしくはないかもしれない……」 　レヴィのその言葉に僕は驚いてしまう。まさか、僕の今の人間の姿も、仮の姿だとでも言うんだろうか。レヴィは僕の顔を撫でながら切なそうな顔でジッと見つめる。 「……身体を売るようなところに売られていなくてよかった」 　僕は一瞬、ナディル・ハザールの顔をが浮かび、ゾクッとした。あの男が僕にしようとしたことを思い出して、僕はレヴィの胸の中に縋りついた。