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第144話 目覚める白金(26)

 僕は今、バラの匂いに満ちた母様が寝ている部屋で、マリー様に人間に変身する方法を教えてもらっている。 「はぁ、こんなお美しいお姿を人間の姿で閉じ込めてしまっていたなんて、フローラは罪作りだわ」  母様のベッドのそばで座りながら、しみじみと言いながら僕を見つめてる。  あの部屋から出る時は、レヴィにかけてもらった魔法で短時間だけでもごまかせたけれど、ヒデュナ様の言葉通り、魔法学校に戻るなら自分で人間の姿を維持しないといけない。  今はレヴィの魔法が解けて半獣人の姿になっている。  一方、レヴィは自力でエリィの姿になると、ヒデュナ様と話があると言って、ヒデュナ様の部屋へと行ってしまった。 「それにしても、レヴィ様の執着ぶりは凄まじいわねぇ」 「マ、マリー様……」  マリー様が呆れたように言う。僕にはよくわからないけれど、僕の身体からはレヴィのマーキングの匂いが酷く匂うらしい。自分ではよくわからないから、そう言われると、こっちが恥ずかしくて仕方がないんだけど。 「ほら、ノア様、ちゃんと集中してください」 「はいっ」  僕は目を閉じたまま、静かに息をしながら両手を広げて立っている。ベッドでは普通の身体の大きさに戻った母様が、相変わらず青い顔で眠ってる。 「そう、ゆっくり、息を吐いて……頭の中に自分の人間の形を思い描いて……」  僕の中での人間の姿は、やっぱり長年見慣れている、あの茶色い髪の平凡な僕。手の平にポカポカと温もりが集まってくる。 「そうです、そうです。そのまま……その姿を強く念じてから……はい、息を止めて!」  マリー様の言葉の通り息を止めると、ピリッと身体に小さな痛みが走る。 「……はい、ゆっくりと目を開けてみてください」  言われたとおりに目を開く。マリー様はにっこりしながら、大きな手鏡を持って立っていた。その鏡の中には、いつもの僕がそこにいた。そのことに、ホッとしてため息が出る。 「あのお美しい毛並みのお色でもよろしかったのでは」  マリー様は手鏡を抱きかかえ、指先で僕の髪を指先で撫でつつ、残念そうな声で言う。 「いえ、これが馴染んでますし……」  それが母様の望みだったのなら、その姿が一番いい。僕は自然と微笑んでいた。マリー様はそんな僕に微笑み返したけれど、すぐに真面目な顔に戻った。 「この姿を維持できる時間は、まだ短時間だと思います。しばらく、戻っては何度も繰り返して、時間を長くしていきましょう」  僕とマリー様はその日一日、ずっとその練習を繰り返した。

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