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第154話 帰還(3)

 明るい日差しが差し込んでいるせいか、王宮の大広間は真っ白に輝いて見えた。壁面には豪奢な彫刻が飾られ、一つ一つの彫刻が僕たちを見下ろしているような錯覚に陥る。その中で、深紅の絨毯の先、大きな玉座に、黄金に輝く王冠を被った大きな白い狼が座っていた。あの人が、この獣人の国の王であり、レヴィのお父様。厳しい眼差しが僕たちに向けられているけれど、レヴィはそんなことを気にするでもなく、ゆっくりと足を進めていく。  結局、ヒデュナ様の屋敷から車で移動するまで、自分で人間の姿を維持する余裕もなく、レヴィもそのままでいいというので、半獣人の姿のまま、ここにやってきた。人間の姿のときよりは大きくなったとはいえ、レヴィと比べれば、まだまだ小さい。彼の歩くペースに遅れないようにと、後を必死に追いかける。  国王様の前に立ち、レヴィは頭を下げる。僕もそれを真似をして慌てて会釈すると、国王が小さく頷いた。 「レヴィ……遅かったな」  国王様からの最初の言葉は、不機嫌そうにレヴィのほうに向けられた。  レヴィは、先に一度、国王様に報告に王宮に来ていたらしい。だから、今日、こうしてお迎えが来たわけだ。  国王様の低く唸るような声に、僕は怖くて無意識にレヴィの後ろに隠れてしまう。それに気づいたのか、国王は僕の方に目を向けた。その視線は何を考えているのか、僕には計り知れなくて、余計に恐怖ばかりが湧き上がってくる。 「申し訳ありません。ちょっと邪魔が入りまして」 「邪魔?」  訝し気にレヴィのほうに問いかける。レヴィは無表情に言葉を続ける。 「……猫野郎の手下が、アイサー邸にまで侵入し、ノアを連れ去ろうとしたもので」 「なんだと」  ブワッと強い怒りのオーラのようなものが大広間に充満した。レヴィは何の反応も示さないけれど、僕のほうは堪らない。その圧力のようなものに押しつぶされそうになって、思わずカクンと膝を折ってしまった。 「あっ」  思わず漏れた声に、レヴィが気が付くと、慌てたように俺を抱きかかえる。 「ちょっと、おっさん、加減してよ」  ……お、おっさん?

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