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第4話

 二人と別れた後、俺はATMへ寄るためコンビニへ向かう。ついでに数日分の食料と水も調達しとかなきゃ死んでしまう。  俺名義の口座。前よりも増えてる残高…今月の振り込みは三五万だった。  毎月二十日に入金される三十万は俺の一ヶ月の生活費だ。今回はなぜか五万多い…あぁ、そうか。  今月は俺の誕生日がある。息子の誕生日に何が欲しいか聞くでもなく、金で済ます親。そこに家族の情なんてモンは無い。   俺が住んでるのは都内の分譲マンションの一室。家賃のかからない家に住む高校生が三十万も使うと思ってんだろうか。  それとも何か…? 俺は肉は黒毛和牛しか食べないグルメだとでも? それなら間違いだ。  俺は牛だろうと豚だろうと鶏だろうと食べる。食にこだわりなんて無い。  そもそも俺は何も作れないからこれが必要なんだ。  左手に持った袋の中には様々な種類のカップ麺。数日分の俺の主食だ。  もし明日カップ麺廃止令なんて出ようモンなら俺はたちまち餓死してしまう。その点ではこれを発明した人に敬意を示してもいいと思っている。  ゆっくりと歩いてやっと2LDKのマンションへと着いた。使ってないどころか入った事もない部屋がある無駄使いの真骨頂を極めるマンション。そこへ帰り、無造作にコンビニの袋を置く。  何時間もダラダラしてシャワーを浴びると、もう食べるのすら面倒でベッドへ入った。  気づけば眠っていた…なんて俺にとって日常茶飯事だ。 「…何時だ?」  時計を見ると十六時だった。 確かベッドに入ったのが深夜の二時だから一四時間も寝たのか。さすがに自分の自堕落さに呆れる。 「身体が重い」  買い置きの水を飲んで一息つく。家の冷蔵庫には水とビールしか入ってない。  昨日の昼以降何も食べてなかった腹が空腹を訴えてくるのを感じ、俺は床に置かれた袋から適当にカップ麺を一つ引っ掴んだ。それは安定の味、味噌バターコーン。 「別になんでもいいんだけどな」  独り言を呟きながらケトルの湯が沸くのを待っていると……  ピンポーーン  ほとんど鳴らない家のチャイムが鳴り響く。  ドアを開ける前に気づけばよかったのに。  何の為の玄関モニターだ。何の為の覗き窓だ。 何の為の内鍵だ。   全てのセキュリティを一気に忘れた俺は、数秒後それを激しく後悔する。 「お休みのところすみません。隣に越してきた者で…」 見開かれる目。 昨日はかけてなかったメガネ。 今はあるそれのレンズ越しでもハッキリわかる意地悪そうな目を俺は覚えている。 「なんで兎丸がいんだよ」 「……獅子原」 「先生ぐらい付けろよ」 ある晴れた冬の日。 隣の部屋に担任の先生が越してきました。

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