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第23話

夜中。 ひんやりとした何かに包まれて目が覚めた。 「…リカ、ちゃん?」 「起こして悪い」 ベッドに入ってきたリカちゃんがギュッと俺を抱きしめる。とは言っても片腕で抱き寄せた形だけど温かかった。 「今何時?桃ちゃんは?」 「1時回ったとこ。アイツなら帰ったよ」 日付が変わっても来てくれたのは嬉しい…けれど、本音を言えば、早く俺の知らない星兄ちゃんを教えて欲しかった。 「なぁウサギ。明日は一緒に飯食おう。その時ちゃんと話すから」 「…わかった」 リカちゃんはちゃんと約束を守ってくれるらしい。 それに素直に頷けば褒める代わりに頭を撫でられる。 クルクルと毛先を指に巻きつけるのはリカちゃんの癖。そしてその指は、そのまま俺の耳に触れる。 小さく笑ったリカちゃんが距離をつめてくる。 「………おやすみのちゅー、してやろうか?」 「いらねぇ」 「お前俺の授業サボったんだから…覚悟してんだろ?」 耳元にスッと寄ってくるリカちゃんは、すごく楽しそうだ。 断ったはずなのに、それを無視してどんどん俺に覆いかぶさってきた。 「お仕置きしてって顔に書いてある」 真上に来たリカちゃんが薄く笑う。 俺が文句を言おうとするより早く重なった唇は冷たかった。 「ぁ……ぅ」 押し入る舌の性急な動きに全てを持っていかれそうになる。リカちゃんとするキスは本当に気持ちよくて、俺はすぐに頭がボーッとしだすから嫌だ。 嫌だって言いたいけど言えなくて、言えたとしても言わないだろう自分が嫌なんだ。 縋りついた俺の手をリカちゃんの長い指が絡めとり、強く握った。その力の強さに比例してキスはどんどん深くなっていく。 置いていかれないようリカちゃんの手を握り返せば、リカちゃんは鼻から抜けるような笑い声を零した。 「お前……バカだけど物覚えはいいのな」 俺には特別、意地悪なリカちゃん。でも、そんなリカちゃんも……好き。 「ほら。もっと舌出せよ…そう、上手だ」 偉そうに笑うリカちゃんも好き。 「お前のよこして。飲みたい」 めちゃくちゃエロくて、でもどこまでも余裕で、俺なんて相手にしてくれないってわかってるのに止められない。 なんでこんなに好きになったのかわからない。 でも本当に好きなんだ。男同士で、10歳も年上で…先生なのに好きで好きで堪らなくて。 こんなに全てを許せるなんてありえない。 「リカ…ちゃ…ぁ…ふっ」 クチュクチュと室内に響く水音は、どちらのものかわからなる。咥内に注ぎ込まれるものを一滴たりとも残したくてなんとか俺も食らいついていく。 「んんっ……ゃ…」 「そんなに悦ばれたらお仕置きになんねぇな」 そうやって楽しそうなリカちゃんが与えてくれる快感に酔いしれ、背中に回した手をギュッと締めた。 「やっばぁ……マジでハマりそうなんだけど」 耳元で囁くリカちゃんは嘘つきだ。 ハマりそうなんて嘘で、そうやって俺を引きずり込むんだろ? 俺が逃げないってわかってて、近づいたり離れたりするんだろ? わかってるのに止められない。 リカちゃんに魅入ったら最後だ。この麻薬のような男に全てを差し出したくなる。 「………おやすみ、慧」 かすれゆく意識の向こう、心地よい声が聞こえて俺は深い眠りについた。

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