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第37話

 風呂を済ませてから行くと言ったリカちゃんと別れて家へ戻る。  リビングのテーブルに、買ってきた灰皿をさりげなく置き、どうしてだかテーブルの周りをぐるぐると回ってしまった。 「俺は何してんだ…」  リカちゃんはこの灰皿に気づくだろうか。それとも疲れてるから、と寝室に直行する可能性だってある。  考えるのはリカちゃんのことばかりで、どうしようもなくなった俺は逃げるようにバスルームへ向かった。  熱めのシャワーを浴びて戻ってくると、すでにソファに座ったリカちゃんの姿がある。その右手にはやっぱり火のついたタバコ。  ……と、いう事は。 「これ、買っといてくれたんだ?サンキュ」  やはり、すぐにバレてしまったらしく、リカちゃんが灰皿の淵をツーッと指で辿る。その口端は上がっていて、すごく楽しそうだ。  嬉しそう……とはまた違う『楽しそう』な表情だった。  灰皿を眺めていたリカちゃんが俺に聞いてくる。 「これさ…俺へのメッセージ?っつーか、お誘いのつもり?」 「は?」 「たまには可愛い事言うじゃん」  ニヤリ、とどんどん上がっていく口角に嫌な予感がする。 「それ…何て書いてる、んだ?」  俺の小さな声にリカちゃんが甘く囁いた。 「I’ll do anything for you…あなたの為なら何でもしてあげる。やっばぁ…ナニをナニしてもらおうかな」 「何って…」 「まだまだ夜は長いから………すげぇ楽しめそう」  ゾクリと震えるような甘い声で囁いたリカちゃんが、蕩ける笑みを見せた。  あぁ…ちゃんと調べて買えばよかった……そう、激しく後悔した時には既にリカちゃんの腕の中だった。 「んッ、んぅッ…ぁ、」 「あー…ッ、気持ちぃ」  パンッパンッと肉同士がぶつかる音と、グチュグチュと粘膜の擦れる音。寝室は今日も卑猥な音で溢れている。  リカちゃんにバックで突かれながら俺は近くにあった枕に顔を埋めた。 「また枕?お前…どんだけ…っ、俺の匂い好きなんだよ……っ、」  奥を穿ちながらも人をからかえるなんてリカちゃんは器用だ。けれどその言葉に吐息が混ざっていて、リカちゃんも感じてくれてると思うと胸がキュウッと鳴る。 「ぁ、あぁッ…リカ、ちゃ…リカちゃ…」 「……っ、どうした?」 「なま、え。名前呼んでっ……俺、の、あぁっ」  ねだるように振り返りながら言えば、その口はキスによって閉ざされる。  口内を舌で蹂躙されながらも突き刺さったままの奥をグリグリと深くまで刺激され、トロッと性器が新たな欲を吐き出す。 「慧っ、慧……慧」  願いを聞いてくれたリカちゃんが俺の名前を繰り返す。その声は掠れて熱く、心臓が痛くなるほど焦がれる。 「リカちゃっん……気持ち、いい?」 「あぁ…慧のナカ、熱くて狭くて…最高……」  その言葉が嬉しい。  リカちゃんが俺の中にいて、俺の名前を呼んで俺の身体をこんなにも求めてくれるのが、たまらなく嬉しい。 「ふぁっ、ぁ、あッ…リカちゃ、もっと…もっと…」 「クソウサギ…煽ってんじゃッねぇっよ、」  後ろに埋め込まれたままのリカちゃんが、グンと体積を増す。元々大きなソレがさらに膨らんで、奥まで押し広げるようにして暴れる。 「リカちゃん……っ、リカちゃんっっ!」 「慧…………慧……」  互いに名前を呼び合い、舌を絡ませると飲みきれない唾液が糸を引きシーツに落ちた。  けれど、そんなの気にならないぐらい、今の俺にはリカちゃんしか見えていない。 「……ッ」  声を押し殺し耐える顔も好き。 「んっ……ハァ、はっ………っく、」  吐息を零しながら肩で息をする姿も好き。 「慧……慧も、俺の名前…呼んで」 「リカちゃんっ!リカちゃん……ッ…リカちゃん!!」  リカちゃんの呼ぶ名前が全部俺ならいいのに。  リカちゃんを呼ぶのが俺だけならいいのに。    それぐらい俺はリカちゃんのことが好きで、好きで仕方ない。 「あっ、あぁッ!!も、イッちゃ…!!」  ラストスパートをかけるリカちゃんの動きに、俺は耐えきれず尻だけを高く上げた体勢になってしまう。  グッと身体を引き寄せ、尻を掴んだリカちゃんが限界まで打ち付けた。 「や、あ、あ、ああぁっ……ンン!!」  荒々しくて、それでいて確実に俺のイイ所を突く動きに、壊れたように喘ぐしかできない。 「や、やだ……イク、イクぅ――……んあぁっ!!」  ビュクビュクと性器が震え、先端から勢いよく白濁が弾け飛んだ。身体中の力が抜けた俺は、死んだようにベッドに突っ伏す。 「ク…………っ、ハァ」  後ろでリカちゃんも達したのを感じる。じんわりと温かくなった後孔が、きゅぅ……と窄まった。まるで俺の心の声を代弁しているみたいだ。  まだ抜かないでほしい……ずっと挿れててほしい。  俺のナカに、リカちゃんをもっともっと。  そう、心の中で願ったことが現実になる。 「1回で終わると思うなよ?」 「んあっ!!」  まだ挿入したまま、リカちゃんが今度は俺を仰向けにする。そして腕を引っ張り、胡座をかいた自分の上に座らせた。 「ぃ……っ、やだぁっ!」  重力と俺の体重を借りてさっきよりも深く奥まで突き刺さる。  嫌だ、怖い……首を振る俺にリカちゃんが微笑んだ。 「慧……もっと俺が欲しいんだろ?」  どうしてわかったんだろう。自信に溢れた顔でリカちゃんが下から俺を見上げる。  その黒い瞳は力強く輝き、俺に「大丈夫だ」と訴えてきた。  リカちゃんなら大丈夫。俺が初めて好きになった人で、俺を誰よりも見てくれる人だから、きっと大丈夫……そう思った俺は、両手を首に回し、小さな声で答えた。 「……壊れるまで抱いて。俺をリカちゃんだけのモノにして」  その意地悪な舌に俺は差し出すように自分の全てを捧げる。  リカちゃんなら大丈夫、また心の中で呟く。

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