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第71話

「これからは俺の為に生きて。リカちゃんがいてくれるなら俺は1人なんかじゃない」 そう言った俺をリカちゃんが見つめる。 生意気で何様だよって怒るだろうか。 バカと笑い飛ばすだろうか。 そんなことを考えながら見つめ合うこと数秒。ゆっくりとリカちゃんの唇が動いた。 「俺は出逢った時からお前のものだよ」 ふわりとリカちゃんが笑って俺の手を握る。 今までで1番穏やかで、1番優しく…それでいてとても幸せそうに笑う。 とびきりの笑顔で、リカちゃんは指と指を絡めて甘く囁く。 「慧が好きだ。もう俺はお前なしじゃ生きていけない」 「リカちゃん…」 「俺にだけ言わせてんじゃねぇよバカウサギ」 久しぶりに意地悪なリカちゃんが戻ってきて、絡めとった俺の指にそっと口付ける。 指の背を軽く吸い、離れた唇が震えた。 「俺をお前の隣に置いてほしい」 零されたのは、すげぇリカちゃんらしくない言葉だった。それなのに……その瞳にもう迷いはない。 出会いは最悪だった。 『お前は1月にもなって担任の顔も知らないのかよ…出席番号18番の兎丸 慧クン?』 『獅子原 理佳。絶対に忘れんな』 リカちゃんは、いつもいつも意地悪で 『盛ってんなよ…エロウサギ』 『素直な子には特別なご褒美やるよ』 『煽ってんじゃねぇよバーカ』 でも本当は、底なしに優しい。 『かーわいい』 『お前1人ぐらい俺が面倒みてやるよ』 『お前は、俺のものだ』 そんなリカちゃんに恋をしたのは必然だと思う。 「おいで……慧」 両手を広げたリカちゃんに呼ばれ、俺は勢いよくその胸元へと飛び込む。 止まらない涙は幸せの証だ。 やっと、やっと俺は自分の『特別な人』を捕まえた。 好きで好きで何度も泣いて、何度もその名前を呼んだ。 求めていた人が、誰よりも恋い焦がれた人が俺を見て俺の名前を呼んでくれる。 それだけで……どうしようもなく嬉しくて。 『幸せ』 その意味を俺は見つけた。

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