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第2話
スパークルとハリル・リードは見回り当番の集合場所へと向かっていた。
見回り当番とは、その名の通り、学校の敷地内や校内に張り巡らされた結界に異常がないか調べて回る作業だった。
「めんどくせ~」
ハリルが歩きながら、めんどくさいを連呼している。
「たったの1時間だろ?」
「その1時間が嫌なんだよ」
ハリルはクラスメイトで、寮も同じ部屋だった。成績も近くて、居残り練習組なことから友だちになった。といってもハリルの場合はスパークルとは違い、魔法の素質がないというより、何かにつけて講義をサボるから、上達しないだけなのだが。
時刻は夜の8時少し前。集合場所に到着する。
「なんでアイツと一緒に回らないといけないんだよ。ただでさえ、毎日毎日顔を合わせてスパルタされんのに」
ハリルの言う「アイツ」とはディアマン・カイザーのことだ。アシュレイと同じ魔法教師育成クラスのメンバーで、ハリルの育成係でもある。
「お呼びかな~?」
突然のディアマンの登場に、ハリルは傍目にもわかるほど飛び上がった。
動揺が隠せないハリルに、スパークルは思わず笑ってしまう。
「こんばんは。待たせたね」
ディアマンの隣にはアシュレイが立っていた。
「 先輩、こんばんは」
2時間前に別れたばかりなのに、スパークルの気持ちは高揚する。アシュレイと一緒にいると自然とそうなるのだ。
見回り当番は、4人一組、二手に別れて行う。
「じゃあ、早速行こうか」
「はい」
スパークルはアシュレイについて行く。
ハリルもしれっとついて来ようとした。
「お前はこっちな」
「いててて」
ディアマンがハリルの耳を掴んで、反対方向へと無理矢理引きずって行く。
皮肉たっぷりの口調で、一見ふざけていても、ディアマンの眼光はかなりの鋭さを帯びていて、スパークルは彼がちょっと恐かった。ハリルから課外授業で散々しごかれているという話も聞いていたし、見回りでもまたパートナーを組まされる彼に同情もするが、自分がディアマンと組みたいわけではない。
「NO~~~!」
断末魔の叫びを残して、ハリルが連れ去られていく。それを見て、アシュレイは可笑しそうに笑っている。
「あの二人は本当に仲がいいね」
仲がいいというべきなのか?スパークルには疑問だったが、そこはあえて触れない。
「僕たちも行こうか?」
「はい」
杖の先に光を灯し、その光を頼りに歩く。
アシュレイと談笑をしながら、和んだ雰囲気で見回りをして、何事もなく無事に終了した。
集合場所まで戻って来ると、ちょうどディアマンとハリルも戻ってきた所だった。こちらの組はハリルがかなり消耗している。
「こっちは特に異常なし」
「こっちも異常はねぇな」
アシュレイとディアマンが報告しあっている。
なんだろう?
スパークルはふと気になって辺りを見回した。
何かに見られている気がする。目を凝らして辺りを見回しても、廊下には底なしの暗闇が広がるばかりで、何も捉えることはできなかった。
「どうかした?」
不審そうなスパークルの様子に気づいて、アシュレイが怪訝そうに覗きこんでくる。
「いえ、なんでも」
全部見回ったけど、何も異常はなかった。ただ気になるだけ。自分の思い過ごしかもしれない。
「じゃあ、無事に終わったってことで、解散な~」
「やったぁ!」
ハリルがようやく解放されたとばかりに喜び、ディアマンがその場を閉めて解散になった。
この時スパークルたちは、気づかなかった。一匹の蝙蝠が天井からぶら下がって、彼らをじっと見ていたことに。
気づいた所で蝙蝠など珍しくもない。だから、気にも止めなかっただろう。
スパークルたちはまだ知らなかった。この一匹の侵入者の存在が、後に騒ぎとなることを。
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