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第170話

「アキさん、お疲れさま、元気でね」 たくみもその二人について行きながらアキラに声をかける。 「ハイハイ、お前もいつまでもコウジにくっついてないで自分の意思もてよ、おバカさん」 アキラは笑いながら言葉を返し見送る。 「はーい。わかりました!」 たくみは頷き、背を向けてコウジたちに並ぶ。 「ぜんぜん分かってないな…アイツ」 やや笑いながら、ため息をついてアキラは呟く。 「…アキラ」 そっとみずきはアキラの手を取り握る。 「みずき、やっと2人きりだな…」 みずきに微笑んで… ふぅ、とアキラは息をつく… 「あぁ、少し休もうか、アキラ…」 少し疲れた様子のアキラ… 「うん…」 手を引いてベンチを探すみずき… 運よくひとつ空いていた。 「アキラ…」 途中で自動販売機に立ち寄り、アキラに1本缶コーヒーを買ってあげるみずき。 「ありがと…あったかい」 手袋ごしにホットコーヒーの温かさに触れ、声をだす。 「良かった…だいぶ身体冷えたな…大丈夫か?」 ベンチにアキラを座らせ、みずきも隣に座る。 「大丈夫、ただ…アイツら帰ったから気が抜けて…」 ゆっくりみずきに寄り掛かりながら答える。 「…あぁ」 そっとアキラを抱き寄せて頷くみずき。 アキラは…静かに瞳を閉じる。 「アキラ?カゼひくよ…」 真冬の夜の公園のベンチなんかで眠ったら… みずきは心配して声をかける。 「んー、眠いから少し休ませて…みずき」 瞳を閉じたまま、ぽそっと答える。 「……アキラ、帰ろうか?」 アキラの様子が心配で声をかけるが… 「…ううん」 そう、瞳を閉じたままアキラは断る。 なんだか動くのがダルい…。 「……、待って…」 みずきは少し考えて、自分のコートを脱いでアキラにかけてやる。 「いいって、みずきがカゼひくだろ…」 スッと瞳を開いてアキラが言うと… 「大丈夫、俺はカゼひかないよ、バカだからな」 軽くほほ笑みながらみずきは優しく伝える。

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