174 / 213

第175話

「ねぇ、お姉さんって美人?」 アキラはぽつりと聞く… 「えっ…どうだろう、俺の顔を女らしく綺麗にした感じだから…」 「ふふ、どんな例えだよ…」 アキラがくすくす笑っていると… 「…本当に、それくらい似ているんだ。よく双子に間違われていたし…」 みずきが付け足して説明する。 「へぇ、じゃ、結構美人なんだ。みずきって造りはいいもんな」 アキラの言葉にみずきは首をかしげ… そっと栗色の髪をすきながら答える。 「…つくり?でも、アキラの方が綺麗だな…若いし」 「…あーぁ、そんなコト言ってるとみずき姉に言い付けてやるんだから…」 笑いながら言うアキラに… 「えっ…」 少し困ったように言い詰まる。 「…大丈夫。出来るだけみずき姉とは話さないようにするから…」 アキラがぽつりと言った言葉を聞き返す。 「…どうして?」 「…なんとなく、その方がいいだろ?…オレもこういうの、苦手だし…」 アキラはまた呟くように言う。 「…苦手?姉さんが?」 会わせたことのない姉が?と首をかしげながら聞いてしまう。 「みずきのお姉さんが苦手ってワケじゃなくて、異性自体がね。あまり関わらないから…オレ」 母親もいないし姉や妹もいないから、異性に関わる機会がない。 誤解したかなと思ってアキラは少し丁寧に説明する。 「…そうか、でも…姉さんは悪い人じゃないから、心配しなくても大丈夫だよ…」 やはり紹介されるのは不安な様子のアキラ。 少しでも気を紛らわそうと伝える。 「…うん、わかってる」 そう頷くと、また瞳を閉じる。 肩を寄せ、手の甲に触れみずきは… 「…熱が上がったな…」 体熱感が伝わりポツリと呟く…。 「……」 アキラは軽く首を振るだけで何も答えない… 眠そうなアキラを休ませてやろうと思い、もう声はかけないことにする。 家に着いたころにはもう日付は変わっていた。 アキラは疲れきっていたので…上着を脱がせ、そのままベッドへ休ませる。 そして、みずきは買物袋を片付けて、軽くシャワーを浴び、ようやく布団に入る。 アキラはすっかり熟睡中で…起こさないよう気をつけながら… イヴの夜、愛しいアキラのそばで…みずきも眠りに入るのだった…。 《イヴの夜》終

ともだちにシェアしよう!