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第178話
「でも…男だって言えないだろ?おまえ」
姉にオレのことを正しい性別で紹介はできないだろ?
「…それは」
アキラの言葉に言い詰まってしまうみずき。
「だから、いいや…良識内の付き合いしてるって安心させた方がいいんじゃない?」
そう勧めてくるアキラだけど…
「…良識って、アキラ…俺は言えるよ、本当のことを…いずれは分かる事だし、姉さんなら反対はしないと思うから…」
みずきは本心だったが…
それを聞いてアキラは…
キッと目つきを鋭くして…
「バカ、絶対言うなよ!」
「…アキラ?」
どうしてアキラが怒るのか分からなくて少し慌てて聞いてしまう。
「……」
アキラはしばし俯いて無言になる。
反対しないって…
そういう問題じゃない気がする。
BOUSで働いてるオレたちにとっては、同性同士でも恋愛対象になるだろうけど…
普通の感覚じゃ、すぐには受け入れられないだろうし…
オレのせいでみずきが家族の人に男と付き合ってるって思われる方がオレは嫌だし…
みずきは別に男が好きって訳じゃないから…
オレの容姿が女みたいだから好きになってるだけで…
本当は女子と付き合うのが普通なんだ…
それなのに、オレ一人のためにみずきの信用をなくすような事を言われるのは困る。
みずきの気持ちとは反するけど…
オレは、みずきのところにずっと世話になる気はないし…
そこまで付き合わせられないから…。
アキラはそう思って、複雑な表情をしているみずきに、もう一度…
「絶対オレが男だって言うなよ!分かった?」
「…あぁ、言わない」
分からないながらも、アキラを怒らせたくないみずきは言う通りにする。
「うん、ならいいよ…」
その答えを聞くと、いつもの表情に戻る。
「…アキラ」
何を考えているのか…
心にわだかまりが残るみずきだが…
今はそれ以上聞くことができなかった…
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