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第183話

「そうだな、もう時間ギリギリだ…アキラは」 どこで待ってもらおうかと考えていると… 「オレはみずき姉が来るまでココで待ってるよ、他に誰か来るかな?着替えに…」 そう首を傾げる。 「今日は店長が遅番でいるから俺が帰る頃まで誰も来ない、安心していいよ…」 この男子更衣室には誰もこないよ、と頷いて答える。 「分かった…頑張ってな!」 頷いて軽くバイバイして見送る。 それを瞳にとらえ、もう一度頷いて表に出る。 出て行って女子店員に言われるまで、帽子を被ったままということを忘れていたみずき… でも、この格好も今日で最後なので、帽子を被って仕事することに決める。 女子店員と交替にみずきが入っていつものように仕事をこなす。 クリスマスともなると、いつもより客足は多い… アキラの事を気にしながらもレジの仕事に追われる。 一通りレジに並ぶ客を片付けて時計を見ると、夜8時前だ…。 ふと気付くとアキラが更衣室から出てきていて、雑誌類が置いてある棚を眺めていた。 みずきは客が途切れたので、アキラに話しかけにいく為レジを一旦離れる。 「アキラ?どうした?」 アキラに横から話しかけるみずき。 まわりで立ち読みしていた客たちも、目立つサンタの格好の店員みずきを一瞬見返る。 「ん?あぁ、暇だったから…気にしなくていいって、ホラちゃんと仕事しろよ」 そうアキラに怒られる。 「あぁ…」 そう言われるけど、アキラの行動が気になって仕方ないみずき… とりあえずレジに戻る。 すると今度は… 「みーきおじちゃん!これください!」 可愛い子どもの声… 「あぁ、かなちゃん…いらっしゃい」 見覚えがあるこの子は自分の姪、姉さんトコの長女だ。 5歳になったばかりの小さな手に握られたお菓子を笑顔で受け取り清算して渡すみずき。 「お金はいいよ、サンタおじちゃんが払っておくから…おこずかいにしたらいいからね…はい」 優しく言って支払われたお金を返すみずき。 「ありがとうっ!」 嬉しそうに笑うカナエ。

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