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第187話
そして少し表情を曇らせ、視線を落とし考えるように頷き…
「…みずきにはね、本当に…苦労をかけたの、高校くらい…行かせてあげたかったんだけど…私たちもギリギリだったから…。あの…父親から、みずきだけは逃げなかった…それどころか、いつも私たちを心配してくれるような…やさしい子…」
そこまで言うとユウリは顔に微笑みを戻して…
「みずきは、学歴こそないけれど、真面目で誠実な子だから、これからも付き合っていってくれるかな?」
アキラは…ユウリの言葉を聞いて、浅く頷く…
「知ってます…」
そう…みずきはイイ奴なんだ…
お姉さんの言う通りに…
だから…思ってしまう。
ただ居心地のいいみずきの傍を離れるのが惜しいから、みずきと付き合い続けている自分と…本当に好きで付き合ってくれているみずき…。
お姉さんは…オレの気持ちがこんなあやふやなものだと知ったら…絶対、付き合わせたくないだろうな…。
そんなコトを思うアキラだけれど…
ユウリは気付くことなく言葉を続ける。
「…私たちは、みずきの大切な時間を潰してしまった…だから、これからは少しでもみずきには幸せになってもらいたいの…」
アキラの瞳を見つめ、わかって欲しいというように言葉をかける。
その瞳を長く受けることが苦しくて、視線を落とすアキラ…
幸せ…
この人の言う、幸せとは…
イイヒトと結ばれて…人並みに温かい家庭を築いていくこと…
病気持ちのオレじゃ…この先、苦労背負わせるのは目に見えているし、悲しませる事にもなるハズ…
アキラはポツリと小さな声で呟く…
「…なら、…オレじゃ…ダメだ」
自分では姉を安心させられはしない…
姉の思う幸せを掴ませてあげることはできないから…
「えっ…?」
ユウリはアキラの声がよく聞き取れなくて、聞き返すが…
「いいえ、苦労してきたんだな…って思って、お姉さんも」
アキラは顔を上げて、微かに笑ってはぐらかす…
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