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第190話

みずきは、柔らかいキスをして…離れ際にアキラの表情をみる。 アキラの顔は、優しく微笑んでいた。 不意にアキラはみずきの胸へ頭を埋めるように寄りかかり…顔を隠す。 「…アキラ?」 どうしたのかと聞くみずき… 「……本当に、オレでいいの?」 感情のない…冷めたような声で呟くアキラ。 「アキラ?いいに決まってるだろう」 だから、指輪も買った。 揃いのものを身につけることで、繋がりを強めたいから… 「……」 みずきの答えはアキラが予想したものと同じだった… 「アキラ?どうした…?」 何も応えないアキラが心配になって再度聞くみずき… 「やっぱり…これは貰えない」 アキラはみずきに握られた左手をスッと解き… はめられたリングを外そうとする。 「…!」 みずきはアキラの動きを目にとめると、アキラの手をもう一度握って、それを制止する。 「…みずき」 顔を上げ…みずきを見る。 アキラが見た、みずきの瞳は悲しそうで… その瞳を避けるように顔を俯かせる。 指輪はアキラの薬指で中途半端な位置に止まっている。 「アキラ…どうして?」 みずきは、もう片方の手でアキラの頬に触れて問う。 「…似合わないから、オレには…」 アキラは、ぽつりと呟く… これだって、決して安物じゃない。 みずきが買うには苦しいものだった筈… 「…だから、必要ない」 オレには…特定のヒトに想われているアカシなんて必要ない… 「…俺には必要なんだ…アキラに身につけていてもらいたい」 アキラの言葉に胸を痛めながらもめげずに言い返す。 「……」 アキラはみずきの言葉を聞いて思う。 (ほら…また、みずきを悲しませている。みずき姉に言われたばかりなのに…オレの言動はみずきを傷つけるコトが多すぎるんだ…) 「アキラ…受け取ってほしい」 みずきは手を握ったまま…アキラを抱き寄せ言う。

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