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【儚い雪の結晶3】
「来られるよ…」
つい言っていた…
「俺が、アキラをどこへだって連れていくから…また一緒に来よう」
そっとその手を握って、綺麗な深緑の瞳を覗き込んで、願うように伝える。
「…アリガト」
しかしアキラは、その瞳から逃げるように顔を俯かせ…
お礼だけくれた…
「アキラ…」
その様子が切なくて…名前を呼んでしまう。
「あ…」
不意に空を見上げるアキラ…
「…ん?」
「雪だ…」
少し驚いたように言葉をだす愛しいひと…
「本当だ…」
ふわりふわりと…雪の粉が少しずつ舞い降りてきていた…
「どうりで寒いわけだ」
そう白い息を吐くアキラ…
「あぁ…大丈夫か?」
そんな様子を見てつい心配してしまう。
「また…」
すると、心配しすぎ!と顔をしかめるアキラ…
「あ…すまない」
「体調悪くなったらちゃんと言うから気にすんな!OK?」
「あぁ…つい、気になって」
「みずきの心配性は治りそうにないな」
そうクスっと微笑む。
「はは…」
確かに治りそうにない…
アキラ限定ではあるけれど…そう苦笑いしてしまう。
「って…雪けっこう降ってきたな」
大きめな雪がパラパラと降っている。
「あぁ、傘無いな…やまないとバイクも危ないし…」
「大丈夫、家もうすぐだし、このまま歩いて帰ろ?」
「あぁ…」
頷いてバイクを片手で押しながら歩き出す。
彼の言うことはたいてい聞いてあげる。
そのひとの笑顔が見ていたいから…
「そういえば…初雪だな」
再び夜空を見上げながらアキラが呟く…
「え…でもこの間、少し降ったらしいけど…」
少し前に初雪を観測したとニュースでやっていた…
首をかしげて聞いてしまう。
「オレたちが見る雪は今年初めてだろ?だから初雪…」
すると、アキラは優しく微笑んで同意を求めるように答える…
「そうか…」
なんともアキラらしいその答えに、微笑んでしまう。
「綺麗だな」
そう雪を見つめ微笑むアキラ…
夜空から舞い降りてくる白い雪はとても幻想的だった…
「クリスマスに雪、降るんだな」
その微笑みを見ていると自分も幸せな気分になる。
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