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第4話

……夕方5時過ぎ。 仕事を終えたみずきは、いつものように自宅へと帰っていた。 ただ、ひとつ違うのはいつもバイク通勤なのだが、今故障中で歩いて帰っていると言う事だ。 日中、雨が降り続いていたが、もう降りやんで、曇り空。 住み慣れた街を寄り道するでもなく早足で歩いて行く。 何気なく泳がせた目線の先に、よく見知った姿が見えたように思い、もう一度確かめるように路地奥を見つめるみずき。 「ッ!…アキラ!?」 うずくまるように座っている、茶色髪の…… みずきは、その人物を見間違える筈はない…。 すぐに様子を見るため近づく。 「…アキラ?どうしたんだ…?」 声かけるが、アキラは、ボーっと顔を上げてみずきを見たあと、また、何もなかったように頭を下げる。 まわりには、酒の缶が数本落ちている。 「アキラ、酒を飲んだのか?」 見た顔は酒を飲んだせいか赤く、力ない表情だった。 みずきはアキラの肩に触れて心配して言うが… 「うるさいッ触るな!」 声を出したかと思うとみずきの手を払い退け、不機嫌に下を向く。 「……アキラ」 一度アキラから手を引いて、困ったふうに息をつく。 触れてアキラの服が、湿っているのに気がつくみずき。 「アキラ…雨にぬれたのか?風邪をひいたらいけない、家に帰ろう」 やさしく、そう言葉をかけるみずき。 しかしアキラは… 「嫌だッオレの事なんか、ほっとけよッ!!」 叫ぶように首を振り言う。 みずきは、腰を落とし、アキラと視線を合わせて、アキラの髪を撫でて… 「アキラ…。ほってはおけないから…立てるか?」 そっと言葉をかけるみずき…。 「……」 みずきの言葉に黙ってしまう。 立ち上がれない様子のアキラを見て、背中へ背負っていくことに…… 抵抗していたアキラも今は、おとなしく背負われている。 どのくらい飲んだのか、アキラは酒の匂いを身体に染みつけていて、雨にぬれたせいか衣服は冷たいけれど、身体は熱く感じる。 取りあえず、自分の家に連れて帰るみずき。 アキラを布団の上におろして、バスタオルを一枚かけてやる。 アキラはみずきの行動に何も言わず流されていたが… 「……飲むか?」 すっと出したコップに汲んだお茶… 「ポカリがいい」 ぶすっとした顔でみずきに言う。 「今、無いが……」 静かに答える。 「じゃ、買ってくればいいだろ」 みずきを挑発するように、わざと言うアキラ。 しかし、みずきは…… 「そうだな…」 顔色ひとつ変えずに言われたとおり近くの自動販売機に買いに行く。 それを見て、余計腹が立つアキラ。 (なんで?フツーこれで我慢しろとか言えよ!なんでも、言う事聞けばいいってモンじゃねーだろっ!) ボスッと大きめの布団に頭を埋める。 まだ酔っていて簡単な事しか考えられない。 酔うと怒りっぽくなるらしいアキラは、ひとりブツブツぐちを言っている。 しばらくして、みずきがポカリを一本かかえて戻ってくる。 「買って来たが……飲むか?」 そう、やさしく言うが… 「いらねーよ!バーカッ!」 またも、怒らせようとそんな事を言う… しかし、みずきは…… 「そうか……」 怒るどころか、静かにポカリを冷蔵庫に入れに行こうとする。 「……!」 怒らせようとしているのに、逆に怒ってしまう。 「待てよ!」 起き上がって、みずきの所まで行き、胸ぐらを掴むアキラ。 そのまま、みずきに怒鳴ってしまう。 「なんで、怒んねぇんだよッ!どー考えてもオレの方が悪ィのにッ!!怒れよッオレが悪いって言えよッオレのわがままだってッ…言えよッ…ッ」 ことばの途中からポロポロと涙が流れてくる。 それを掴んだみずきの服に顔を押しつけて止めようとする。 「…ッ、ッ何か言えよッ!」 もう一度怒鳴るアキラ。 「……アキラは、それが分かっているから、俺が怒る必要はないんだ」 やっと、口を開くみずき。 どんな言葉でも、アキラと話せるならそれでいい…こうして触れ合えていられるなら。 静かに思う。

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