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第5話
「くそッ!」
短く吐き捨てるように言い、スッとみずきから離れていく。
何もかもに腹が立つアキラ。
「何で、こんなにムカつくんだ!?おかしいぜッ!」
アキラは言って、外へ出る戸に向かう。
「どこへ?」
アルコールでフラフラなアキラを心配して聞くみずき。
「さぁ?でもここに居たら絶対お前に悪態つくばかりだからな…もう行く」
ヒラッと手を振って行こうとする。
「だめだ、行くなら酔いがさめてからにしろ、危ないから…」
アキラに追いつき言う。
「は!オレだってもう子どもじゃねぇ車にひかれやしねぇよ」
「絶対はないだろ……」
そう言いアキラに向い手をのばす。
「ふッ、バカだなぁ…オレなんか、ほっとけばいいのに、なんでそんなに構うんだ?オレの事スキになったとか?」
アキラは冗談で言っただろう言葉に、みずきは心臓がドクッと飛び出す思いを味わう。
そのまま固まってしまうみずき…
「んな、冗談だよ。あからさまな顔すんなよ…分かってんだよ、オレに寄って来るのはみーんな、オレの見た目だけ見てるコト……性格最悪だからムリもねぇな、まだ顔がマシなだけいーか…」
止まってしまっているみずきに向かいそう笑う。
アキラが酔っている姿を見るのは初めてなみずき…
赤い顔、潤んだ瞳で見上げられ、何か言いたいのだけれど、言葉が出ない。
「……」
「じゃ、少し休ませてもらうゼ。さんきゅな!」
ポカリを受け取り礼を言って、敷いてある布団へ寝転ぶ。
ポカリをそばに置いている。
みずきがアキラのそばにやってきて、あぐらを組んで座ると、アキラが横になったまま話し始める。
「……オレさ、……わかってたんだけどな、ルードがオレの事愛してくれないコト」
しんみり話しているアキラ。
みずきはいつものように聞いている。
「だけど、どこかで期待してた……アイツならって、そう言う所がダメだったんだろーな、うっとおしがられちゃ終わりだよ」
ぼーっと天井を眺め…
ルードのことを思い浮かべながら話すアキラ…
「……オレもアイツみたいに綺麗な心持ってたらアイツ一人縛らずにすんだのに。はぁ、生きてる間に、一人でいいから本当にオレを愛してくれる人、見つけたかったな……」
布団に顔を埋め息をついて続ける。
話し方が不自然で不安な気持になる。
「まだ生きているんだ、自殺はするなよ……」
アキラの口ぶりが死のうとしている様だったので、いさめるように言うみずき。
その言葉に軽く笑う。
「ハハッ、自分から死のうなんて思ってねーよ、そんな事しなくてもオレは…」
そこまで言って、静かになる。
『オレは……』の後が気になり眉をひそめるみずき。
「あーぁ、オモシロクねぇ…オレってそんなに性格悪いかな?みずき。はぁ、オレだって、オレなりに頑張ってるつもりなんだぜ…」
さっきのコトバも耳に残っているが…
「……」
みずきは応えに詰まっていると…
「そーだよな、お前も自分の事で、手一杯だもんなぁ…本当は早く帰ってほしいとか思ってんだろ?」
「そんな事はない……」
頭を横に振りながらそれだけは答える。
「いいよ、気ィ遣わねーで。はぁーこんな思いばっかするのも、おとなしく死ななかったからかな、親父は正しかったのかもしれねー」
「どういう事だ?」
アキラの言葉の内容に聞き返してしまう。
「オレってさぁ、誕生日が2日あるんだよ」
「え?」
普通に言うアキラだが、誕生日は1日だろうと思うみずき。
「今の誕生日は、4月2日、で1月13日は本当にオレが生まれた日、そして、オレの命日になるハズだった日…」
いつの間にか座っているアキラ。
みずきに向かい平然と言っている。
「め、命日…?」
理解に至れず、ボウ然とその言葉を繰り返す。
「親父がさ、オレが早産で生まれて、難病持ってるって分かってすぐ、院長の権力使って、オレの保育器を止めようとしたらしいんだ。オレは死産で、1月13日に死んだ。届けも書いたみたいだけど、健次さん…オレの叔父さんが強く反対して、こうして生きてられてるんだ。出生診断書も書きかえて届け出したのが4月2日ってワケ、本当はない命だったんだよ…オレは…」
過激な話を、感情を見せないように淡々と言う。
その様子が痛くて目線を合わせて聞いてしまうみずき。
「どうして…」
アキラはみずきと視線が合うと少し笑うように答える…
「親父は、医者になれない、跡とりになれないオレは必要じゃないからな…親父が欲しいのは、自分の思うようになる人間だけなんだよ」
「なぜ、お前は医者になれるほど頭がいいんだろ?」
なげやりに言うアキラをみて、そっと近づいて伝えるみずき。
「いくら…本読んで勉強したって、病気持ちってだけで医療系の大学には入れねーんだよ、医大付属高校も弟より成績良かったけど合格出来なかったし、それが分かってたから親父はオレを消そうとしたんだろ…オレじゃムリだから…」
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