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第7話

けんじさんに助けられた命。 自分から絶つような事はしたくない…… 親父に対する反発で、存在を否定されたオレが、自由に他と変わらず生きていける事を思い知らせたかった。 でも、この病気はそんなに簡単なものじゃなかった…。 子供の頃は分からなくても成長するにつれて出てくる力の差、弟に守られる劣等感。 いつもつきまとって離れなかった…… 温かいみずきにすがりついてしまう。 死なんか恐くない、それまでが恐いから。 あと何年…自分の足で立っていられるか…… あと、どのくらい自由でいられるか…… 不安に心を奪われているアキラ……。 みずきは、静かに抱きしめるのをやめて、アキラから離れる。 50㎝ほどしか離れていないが、アキラは拒否されたように思え、涙の流れる顔を俯かせてしまう。 心が痛くなる…… しかし、みずきはアキラの顔を右手でそっと上げて… 左手で、やさしく涙のしずくを拭いとり、一言……。 「一人には、させない…」 すっと、そのままアキラの瞳をふさぎ、ほぼ同時に温かい唇を重ねる……。 「…ッ!?」 一瞬、驚いたアキラだが、安心したように瞳を閉じ、やさしいキスを受け入れる。 みずきの頬につたう涙を両手でなくしながら… はじめて、理由のないみずきからの口づけ、柔らかくて…繊細で、あたたかい…。 長すぎず、短すぎず、スッと離れて、抱き寄せるみずき…… 「…失いたくない、お前を愛している…」 耳もとで、ささやくように静かに告白する。 ずっと、言えずに押し殺してきた感情を言ってしまって、冷たいものが心をよぎる。 今まで言えなかった理由……。 もし、拒絶されたら……。 不安になり抱き寄せている手に力が入る……。 「……ありがと、うれしいよ…でも複雑だな。オマエもやっぱ、オレの見た目に惹かれたんだろ」 アキラは静かにみずきに言葉をかえす。 「…他にねーもんオレいいとこなんか…お前は、違うと思ってたんだけどな…」 みずきに抱きしめられたままポツリと言葉にする。 みずきは、ハッとしてアキラの肩を持ち言う。 「違う!俺は見た目だけじゃない、アキラのすべてが好きなんだ!」 瞳が合って… かぁ…っと赤くなる、みずき。 その様子をびっくりして見てしまうアキラ。 「…すべてが好き、か…嘘みてー…なんで?どこがイイんだ?オレの性格、自分勝手でワガママで、口悪ィし、オレは嫌いだぜこんなヤツ」 クスクス笑いながら聞いてくる。 「アキラは俺には無いものをたくさん持っているんだ、頭が良くて、行動力があるし、怪我人をほっておけないやさしい所とか尊敬できるし、俺はアキラと一緒にいると安心する…」 必死に今まで思っていたことを言葉に繋げるみずき… 自分に向かって顔を赤くして、少し照れながら言うみずきが、なんだかかわいく思えるアキラ。 みずきの顔に触れて言う。 「…そんな、ホメすぎだぜ、ウレシーけど…オレも、みずきといると安心する。なんか頼っちまうんだよなー、勝手ばっかり言って、悪ィと思ってるんだけど、オマエ何でも聞いてくれるし、こんなふうに何でも話しちまう…」 やさしく気持ちを言葉にする。 「…たぶんオレも他の奴よりトクベツに思ってたんだろうな、みずきの事。でも…まだオレ、ルードの事が…あいつの事が忘れられない、ほっておけないんだ…ごめん。嬉しいのに、愛しかえすことができない…みずきの気持ち、凄く良くわかる…オレの今の心と同じだから…」 (ルードに愛してもらえないオレ…オレに愛してもらえないみずき。それでもオレは、ルードが好きで…オマエは?) アキラは、俯いて心で思う。 「それでも…俺はアキラを愛し続ける。それは変わらない、ずっと前からそうだったから…」 「ふふっバカだなぁ…オレみたいなヤツ好きになるなんてヨ、BOUSには、もっとイイ奴たくさんいるのに…」 パッと顔を上げてにっこりと笑う。 「馬鹿でいいよ…その笑顔が見られるなら…」 アキラの頬に触れ、そしてやさしく笑いかけるみずき。 「みずきも…この1、2年で変わったよな、こんなに笑顔が自然に作れるようになった。オレのおかげかな…」 片手でみずきの頬に触れ、そのまま横髪を耳へかける。 「あぁ、そうだな…」 アキラに触れられるだけで、心臓の鼓動が早くなる。 「うん、オレは変わんねーケドな…」 続けてひとり言のように言う。 「…身長もあんまり伸びてないし、あ、体重は減ったなぁ…髪も少し伸びたな」 ぽつりぽつり言うアキラを見てみずきは… 「お前も変わったよ、大人っぽくなった…」 アキラのことは子どもの頃から知っている。

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