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第9話《恋人…同士?》
みずきのアパートで少し休憩したアキラ。
成り行きでみずきを連れて自宅へ戻ることに…
アキラは白いカッター系の服にジーンズというラフな格好で、髪はいつものように後ろでまとめて結んでいる。
まだ少しいつもより虚ろな瞳で酒の影響が出ているのかほんのり赤い顔をしている。
そんなアキラと一緒にいるだけで落ち着かない気分になるみずき。
アパートから、アキラ宅へ移動するため、先に外へ出ようとしたみずきだが……
「あ…」
外を見て声を出す。
「何?どうした?」
すぐ寄ってくる。
「雨、降りだしてる」
ぽつりと言うみずき、アキラも外を覗いて…
「またぁ?さっきまでやんでたのに、カサ持ってねぇや…」
困ったふうに言うアキラを見て…
「これ、お前が使え、一本しか持ってないから」
そっと、傘をさしだしながら言うみずき。
「そうしたら、アンタ濡れちまうぜ。風邪ひかしたら悪ぃし」
傘を受け取りながら考える。
「俺はいい、勝手について行くのだから」
遠慮するみずきだが…
「よし!アイ傘していけばイイだろ、傘大きいし」
「相ガサ?」
首をかしげるみずき。
言葉を知らないようだ。
「そ、一緒にさすんだよ。カサを!でも、男同士ってあんまりしねーよなぁ…よーし、オレが女役やってやるよ」
なんだか楽しそうに話を進める。
「女役…?」
話についていけてないみずき。
ハテナ状態でアキラの動きを見ている。
アキラはかまわず後ろでまとめている栗色の髪をスッとほどく。
肩より長めの髪がパラっと広がる。
「……」
アキラは手ぐしで髪を整えている。
その様子に、ボーっと見惚れてしまうみずき。
ぱっと瞳を合わせてアキラは…
「オレ、顔カワイーから、髪おろすと女に見えるだろ?それを利用しようっての、どう?」
髪をおろしたアキラは10人が10人とも女性と見間違うほどキレイなのだ。
まぁ、髪をくくっていても8割くらいの人は間違えるのだけど…
そのくらい男っ気がないアキラ、見た目だけは…。
「あぁ、綺麗だ」
素直に感想をのべるみずき。
心の内はドキドキだ…。
「どーもっ…アリガト。おまえオレが髪おろしてる方が好きなんだな、顔赤いぜ!」
アキラに指摘されドキッとするみずき。
片手で顔を隠すが、その動きをくすっと笑う。
酒のせいか、いつもよりテンションが高く可愛いアキラ…
「テレなくていいって、さぁ、行こう行こう!」
遠足でも行くように、明るく言いみずきの手を引いていく。
「すっげーな、雨…」
アキラは傘をバッと、広げながら外を見て言う…
「俺が持とう」
みずきは横からスッと傘を持つ。
「あ、サンキュ…」
微笑しつつ礼を言いい、並んで歩きだす二人。
まるで、恋人同士のように……。
みずきは遠慮ぎみに、アキラの手をとり手をつなぐ…。
熱い手をしているアキラ。
「…やっぱ、あんまり人いねーな」
手をひかれ、みずきの顔を少し驚いたように見るが…普通に話しだす。
夜九時前だが、住宅街には二人以外、人影はない。
「この雨に、この時間じゃ…」
暗闇の中、街灯の、薄明りが雨を照らしている。
「そう言えば、みずき。暗いのもう平気になったのか?」
アキラはふと思い出したように聞く。
「あぁ、おまえが居てくれれば平気のようだ…」
微かに笑いながら、静かに答えるみずき。
「そっか、オレって結構、役に立ってんだな…」
「あぁ、かなりな…」
アキラの言葉に少し恥ずかしそうに言う。
「でも、がんばって一人の時も平気にならないとな、オレがいなくなった時困るから…」
何気なく言うアキラの言葉に、みずきは心が痛む。
(いなくなる……死…)
考えたくないみずき。
まったく違う質問をしてしまう。
「……アキラの髪の色は自毛か?」
「は?えっ、この髪?あぁ自毛だぜ、見たらわかるよーに、ハーフだからなオレ」
自分の栗色に伸びた髪を触りながら答える。
「そうか…ずっと、気になっていたから…」
「そう、みずきは染めてるよな、中学までは黒髪だったから…」
そう横目で見上げる。
「あぁ、…親父への反抗心だな、これは…」
「ふーん、いいんじゃねーの、何でも言いなりになるよりさ。オレなんか生きてる自体、反抗だからなオマエも、もっと反抗すればいいんだよ」
あたり前のように伝える。
「……アキラ」
複雑な気持ちで、奥歯を噛むみずき。
「おー、見えた見えたオレん家!やっぱ近いなー」
しばらくすると三階建てのアキラの家が見えてきた。
歩いて数分の場所だ。
「さすがに大きい家だな…」
ちょうど道を挟んで高級住宅地と普通住宅地の境にあるアキラの家を見上げてポツリと言うみずき。
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